どうして起こった？金とプラチナ相場の逆転

金とプラチナはどちらも貴重な金属ですが、希少性の高さはプラチナに軍配が上がります。しかし、近年プラチナ相場は金相場を下回る傾向にあるようです。このような逆転現象が起こった理由、これからプラチナ相場が上昇する可能性についてお話します。

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2024.11.06

プラチナは金より希少な金属

プラチナは金に比べて産出量が少ない金属です。金の年間産出量およそ4,000tに対し、プラチナはおよそ200tしか算出されません。これまで人類が採掘してきた金の量は推定約160,000tですが、プラチナはその30分の1程度である約5,100tです。埋蔵量もはるかにプラチナの方が少ないであろうと推測されています。

国際基準のオリンピックプールを例に取ると、以下のように表すことが可能です。
●プラチナ：金＝足首がつかる程度：プール3杯分
こうして見ると、金に対してプラチナがいかに希少な金属であるかがわかります。当然、以前はプラチナのほうに「希少価値」があるとして高い評価が下されていました。

プラチナと金の産出場所の違い

また、金の産出する場所は地球上に点在していますが、プラチナはごく限られた土地でしか取ることができません。
年間産出量の7割が南アフリカ共和国産、2割がロシア産、残り1割をジンバブエ・カナダ・アメリカ産です。
日本でも少量のプラチナが北海道や新潟県で発見されていますが、純度の高いものではありませんでした。

産出量の7割を占める南アフリカ共和国による影響は極めて大きいです。南アフリカの鉱業現場で労働に対する公平性を求めるため、長期にわたる大規模なストライキが起きたり、地政学的な問題が生じたりするとプラチナの相場が急騰することが考えられます。

金とプラチナ相場に起きた変化とは

通常、希少性の高いプラチナのほうが高い価格になるはずですが、近年は金とプラチナの相場に逆転現象が起こり、金相場がプラチナ相場を超えてくる傾向にあります。
その傾向が表れたのは2011年後半です。金とプラチナの価格はその年を起点に逆転現象を見せ始め、2015年には一度“通常時”に戻ったものの、その後再び金優位の相場になっています。
現在も金はプラチナより高い相場を推移し、逆転現象は解消されていません。

いつの間にか価値が逆転

プラチナの方が希少性の高い金属であるにもかかわらず、なぜ金相場の方が高くなったのでしょうか。その理由には需給バランスが挙げられます。
●用途の変化
●中国のプラチナ需要量が減少
●情勢不安による金の需要量の増加
一つずつ確認していきましょう。

用途の変化

金は総需要量のうち、5割以上が宝飾品の素材、1割程度が工業用部品として使われています。
それに反して、プラチナの宝飾品としての需要は3割程度で工業用需要が6割以上と、2つの金属には必要とされている分野に差があることがわかります。
プラチナは、とりわけ自動車産業において使われることが多く、車の売れ行きが悪いと価格が下がってしまうことがあります。
代表的な例が2008年9月のリーマンショック時で、世界的な不況となり自動車の売れ行きは悪化。プラチナ相場も影響を受けて急落しました。
自動車産業で使われているプラチナの約4割は、ディーゼル車の排気ガスをきれいにする触媒のために使用されているといわれています。ガソリン車に比べて安価な軽油ではありますが、有害な排気ガスの浄化装置のコストが高く、ディーゼル車の新車台数は減りつつあるのが現状です。ディーゼル車の減少とともに、自動車産業でのプラチナ利用も減ってきています。

中国のプラチナ需要量が減少

装飾品部門でのプラチナ人気は、中国と日本に集中しています。特に中国は宝飾品素材としてのプラチナ輸入量が世界トップでした。
しかし2013年以降、中国のプラチナ需要は減少傾向にあります。中国の宝飾店が利益を上げるためプラチナの純度を下げたアクセサリーを作るようになったことも原因のひとつでしょう。
しかし中国が現在もプラチナを多く輸入しており、それ以上に放出していないことから、今後は世界的にプラチナの供給不足が起きる可能性も否めません。供給が需要を上回れば、プラチナ価格は自ずと上昇傾向を見せ始めると予想できます。

情勢不安による金の需要量の増加

価格変動が激しいプラチナに対して金は安全な資産として人気を博しています。金は世界共通の通貨と言える資産で、不景気の時に相場が上がりやすい金属です。世界経済が不安定な昨今、「守りの資産」として金を保有する方が増加していると言われています。
プラチナは法定通貨の素材となることはありますが、金のように世界中で普遍的な価値を保ち続ける保証はありません。リーマンショック後の円高も相乗効果を生み、日本国内で取り引きされるドル建ての金は相場を上昇させていきました。

こうした背景から、金相場、プラチナ相場の逆転現象が起きています。この傾向は今後も続く見通しです。

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プラチナ相場が上昇する可能性は？

前述のとおり、世界に流通するプラチナの9割が南アフリカ共和国とロシアで産出されています。そのため両国の経済状況によってはプラチナ価格が再び高騰することはあり得ます。
実際に、1998年のロシア金融危機の際はプラチナの輸出が止まって価格が上がりました。2008年、リーマンショック直前も南アフリカの財政難への懸念や現地鉱山会社の経営ストップなどによりプラチナ価格が急騰しています。
今後も二大輸出国の状況次第で価格の変動は考えられますが、金とプラチナの逆転現象解消には長い時間がかかると予測する声もあります。
プラチナ相場の推移を予測するためには、限られた輸出国の状況だけではなく、工業用需要に注目することが大切です。

高まる燃料電池車の需要

ディーゼル車の浄化触媒装置として多くの割合を占めていたプラチナですが、現在世界の動きはディーゼル車やガソリン車から脱却し、燃料電池車などへの移行が始まっています。この動きは日本でも急激に加速し、各大手自動車メーカーは巨額な資金を投入。こぞって燃料電池車や電動車などを発表しています。
燃料電池車は、プラチナを多く必要とする設計です。この流れがさらに強まる2020年代後半には、自動車産業でのプラチナの需要も回復し、それに伴いプラチナ相場が上昇する可能性があるでしょう。

新しいエネルギー・水素に集まる注目

脱炭素社会を掲げる現代において、新しいエネルギーとして注目を集める水素。燃焼時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、脱炭素社会においては大きな魅力を持ちます。
その水素を作り出す水素生成装置はプラチナを使用するため、利用拡大とともに高い需要が見込まれます。必然的にプラチナ相場も上昇傾向を見せ始め、希少価値が高まれば現在よりも貴重な資産として認知されるでしょう。
金とプラチナ相場の逆転現象が転じるかどうかは断言できないものの、今後の脱炭素社会や工業需要が重要なキーとなって、プラチナ相場は変動するといえます。

資産として有用なのはどちらか

現状、資産として優位なのは相場が上昇傾向にある金である、という見方が強まっています。金は過去を振り返っても「価値がない」状態になったことはない有益な資産です。実物資産は世界情勢が不安定なときほどその価値が見出されるといわれ、投資家だけでなく国家も保有するため、需要が途切れることはありません。現状、世界では戦争や紛争、エネルギー高騰によるさまざまなものの値上げなどが相次いでおり、安全資産である金を求める動きは自然ともとれるでしょう。
しかし、相場の上下が激しいプラチナは、視点を変えれば金よりも利益を得るチャンスが多い資産であるとも言えます。プラチナの価格が低迷しているうちに購入しておき、長期にわたって保有していれば、いずれプラチナ価格が高騰した際に利益を上げることができると主張する投資家もいるようです。個人の投資戦略によって、金とプラチナのどちらが有用な資産であるかは変わってくるでしょう。

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