ルチルクォーツ(ルチレイテッドクォーツ、ルチルレイテッドクォーツ)/Rutile Quartz (Rutilated Quartz,Rutilelated Quartz)
ルチルクォーツは、針状のルチル(金紅石)がインクルージョン(内包物)としてクォーツの中に入ることで生まれた宝石です。
内包されるルチルの色は、金色・レッド・ブラックの3色です。しかし、実際にはプラチナ色やグリーン等の色が入った“ルチルクォーツ”も数多く流通しているのです。
その理由や、名称の由来や価値、その特徴や石にまつわる言葉の意味などを、詳しくご紹介します。
宝石の属性
名前 | ルチルクォーツ/ルチルレイテッドクォーツ |
英語名 | Rutile quartz/Rutilelated quartz |
和名 | 針入り水晶 |
色 | 透明、金色、赤色、茶色、銀色、黒 |
グループ(種・変種) | クォーツ、アメシスト、シトリン(シトリンクォーツ)、ローズクォーツ、モーリオン(モリオン)、ミルキークォーツ、スモーキークォーツ、レモンクォーツ、グリーンクォーツ、カルセドニー、ジャスパー、カーネリアン、アゲート(アゲード)、クリソプレーズ、オニキス(オニクス)、サードオニキス(サードオニクス)、ブラッドストーン |
硬さ(モース硬度) | 7 |
光沢 | ガラス光沢、金属光沢 |
化学成分 | SiO₂ |
結晶系 | 三方晶系(六方晶系) |
誕生石 | 8月 |
宝石言葉・意味
- 宝石言葉
- 洞察力、真実、家内安全
- 意味
- 優れた洞察力と真実を見分ける力を持つ。家族・家庭の平和を保つ。
産出国・産地
- ブラジル:ミナスジェライス/Minas Gerais、ノボオリゾンテ/Novo Horizonte、ディアマンティナ/Diamantina、ジェキタイ/Jequitai
- ロシア:全域
- スイス:全域
- フランス:全域
- アメリカ:アーカンソー/Arkansas
- 中国:四川省、広西省、チベット自治区
- オーストラリア:全域
- マダガスカル:全域
- 日本:山梨県
特徴・特性
ルチルクォーツは、二酸化ケイ素が結晶することでできるクォーツ(Quartz/石英・せきえい)の内包物として、針状結晶のルチル(Rutile/金紅石・きんこうせき)が入った石の宝石名です。
金色のルチルの入ったものがメインの宝石ですが、他にもカラーレパートリーがあります。
また、まれにルチルの繊維により猫の目のような光の筋が現れる、キャッツアイ効果のある石も見られます。
様々な形状のルチルクォーツ
ルチルクォーツのインクルージョンの色は、大きく分けてゴールド・レッド・ブラックの3つです。その色や、インクルージョン(内包物)として入るルチルの形状で別名が付けられ、流通しています。
なお、3色のカラーに共通するルチルの名称として、直線的なインクルージョンのことをキューピットダーツ(Cupid darts/キューピットの矢)と呼んでいます。
ゴールドルチルクォーツ
針や髪の毛のような細さの、金色のルチルが入ったものをゴールドルチルクォーツといいます。この色のルチルの入り方で、さらに細かい別名がつけられています。
・タイチンルチルクォーツ:ルチルが束状もしくは板状になって入っているもの。
・ヴィーナスヘアルチルクォーツ:ブロンドヘアのようにしなやかに湾曲したルチルが入ったもの。
レッドルチルクォーツ
赤色や赤褐色のルチルが入ったものを、レッドルチルクォーツと呼びます。綺麗な赤色のものは産出量が極端に少ないため、希少なルチルクォーツに分類されています。
ブラックルチルクォーツ
内包されるルチルが黒いものを、ブラックルチルクォーツと呼びます。
同じブラック色のインクルージョンが入るものには“トルマリンインクォーツ”がありますが、前者のブラック色はよく見ると赤みや茶色みを帯びているのに対し、後者は濃グレーからブラックと赤みのないものになることから判別は可能です。
ルチルクォーツ以外で“ルチル”の名称がついているクォーツ
針状のインクルージョンが全てルチルではないのですが、その見た目から“○○ルチルクォーツ”と、コマーシャルネーム(※1)で呼ばれているクォーツがあります。
ラビットヘアルチルクォーツ
うさぎの被毛のような、繊細な針状インクルージョンの入ったクォーツを、ラビットヘアルチルクォーツと呼びます。実際には、ルチルではなくアンフィボール(Amphibole/角閃石)が内包されることで、フワフワした見た目になります。
正式名称は、“アンフィボールインクォーツ(Amphibole in Quartz)”です。
グリーンルチルクォーツ
緑色の針状インクルージョンの入ったクォーツを、グリーンルチルクォーツと呼びます。実際にはアクチノライト(緑閃石)、もしくはグリーントルマリンが入っています。
正式名称は、“アクチノライトインクォーツ”もしくは、“トルマリンインクォーツ”です。
プラチナルチルクォーツ
プラチナと名称にありますが、実際にはプラチナではなくチタン(チタニウム・タイタニウム)が針状に入ることでプラチナに見えるクォーツが、プラチナルチルクォーツです。
正式名称は“チタニウムインクォーツ”になります。
なお、板状の酸化チタンが入ったプラチナルチルクォーツは、正式名称が“ブルッカイト(板チタン石)・イン・クォーツ”で、希少石のひとつとなっています。
価値
ルチルクォーツは、インクルージョンの入り方がひとつひとつ異なる“オンリーワン”の宝石です。
そのため、ルチルの入り方や色、ルチルの多さ、輝きなどチェックする項目も多くなります。明確な基準はないため、最終的判断は総合的に見たときの美しさになることの多い宝石です。
ルチルクォーツ共通の価値
一般的には、以下のようなものが高評価となります。
・クォーツの透明度が高く、ルチル以外のインクルージョンがないもの。
・ルチルの入り方に偏りがないもの。
・ルチルの色に曇りがなくビビットで輝いて見えるもの。
・ルチル率の高いもの。
・カボションやラウンドの場合、シンメトリーにカット(研磨)されているもの。
また、以下のものはマイナス評価になります。
・ルチル率の少ないもの。
・ルチルが偏って入っているもの。
・ルチルの色がくすんでいたり艶がなかったりするもの。
・クォーツの透明度が低いもの。
・ルチル以外のインクルージョンが目立つもの。
・クラック(ひび割れ)や欠けなどがあるもの。
・クォーツの透明度が劣るもの。
なお、個別の評価は以下のとおりです。
ゴールドルチルクォーツの価値
ルチルの色がゴールド色に近く均一で、錦糸のように輝いて見えるものほど評価は高くなります。
なお、タイチンルチルで色が鮮やかなもの、ルチルが多く全体を覆うように煌めいているものはさらに評価が高くなります。
レッドルチルクォーツの評価
ルチルの赤みが強いものほど高評価になります。
ブラックルチルクォーツの価値
ルチルが黒くなり、宝石質で産出されることは非常にまれです。
そのため、黒いインクルージョンになることもある針状トルマリンが入った“トルマリンインクォーツ”が、ブラックルチルクォーツとして流通することがあります。
しかし、価値では10倍以上の開きが出ることもありますので、注意が必要です。
キャッツアイ効果の価値
ルチルクォーツでは、ルチルがクォーツを覆うほど入ることでキャッツアイ効果の生まれる石があります。宝石の質が同等だった場合、キャッツアイ効果のある石はプラス評価となります。