スモーキークォーツ/Smoky Quartz

スモーキークォーツは和名で煙水晶と呼ばれる言葉どおり、煙のような灰色から茶褐色系の色を有する“色付き水晶”の一種です。
大きな石も採石されることから、インパクトのあるジュエリーも制作できること、また、透明感のあるブラウングレー等の色合いが美しく、華美になりすぎない魅力が支持されています。
スモーキークォーツの名称由来や価値、その特徴や石にまつわる言葉の意味などを、詳しくご紹介します。
宝石の属性
名前 | スモーキークォーツ |
英語名 | Smoky Quartz |
和名 | 煙水晶(けむりすいしょう) |
色 | 灰色、黄灰色、黄褐色、こげ茶色、黒 |
グループ(種・変種) | クォーツ、アメシスト、シトリン(シトリンクォーツ)、ローズクォーツ、モーリオン(モリオン)、ミルキークォーツ、ルチルクォーツ、レモンクォーツ、グリーンクォーツ、カルセドニー、ジャスパー、カーネリアン、アゲート(アゲード)、クリソプレーズ、オニキス(オニクス)、サードオニキス(サードオニクス)、ブラッドストーン、 |
硬さ(モース硬度) | 7 |
光沢 | ガラス光沢 |
化学成分 | SiO₂ |
結晶系 | 三方晶系(六方晶系) |
誕生石 | 11月 |
宝石言葉・意味
- 宝石言葉
- 素直・安眠・責任感・負けない心
- 意味
- 素直な性格で健康的。くじけない強い心と責任感も併せ持つ。
産出国・産地
- 中国:山東省、チベット自治区
- ロシア:ウラル(ウラール)/Ural
- ブラジル:全域
- スコットランド:ケアンゴーム/Cairngorm
- アメリカ:アーカンソー/Arkansas、パイクスピーク/Pikes Peak
- 日本:山梨県
- ボリビア:ユルティ/Yuruty
- 南アフリカ共和国:全域
- スイス:全域
- スペイン:全域
- オーストラリア:全域
- ドイツ:全域
- イギリス:全域
- タンザニア:銭機
- エジプト:全域
- スリランカ:全域
- マダガスカル:全域
- アフガニスタン:全域
- ミャンマー:全域
- ケニア:全域
特徴・特性
スモーキークォーツは、二酸化ケイ素が結晶したことによってできた透明な鉱物のクォーツ(石英/Quartz)の一種で、灰色や灰茶色のものを指す宝石名です。
色の発色要因
鉱物中のケイ素が、アルミニウムイオンにごく少量置き換わり(置換して)、そこに多量の放射線が当たったために現れた色中心(※1)で、灰色に見えると言われています。
放射線量が多いほど、黒くなるとも言われていますが、いまだ明確な発色要因は解明されていません。
スモーキークォーツの名称の由来
スモーキークォーツは、その名のとおり煙のようなクォーツという意味で、和名も煙水晶と名付けられています。実際のスモーキークォーツは、透明度がある中にも茶色や黄色が含まれた灰色から黒に近い色をしています。
なお、スモーキークォーツの中でも、スコットランドにある山脈ケアンゴームで採石されたものを、産地の名称のままに“ケアンゴーム”もしくは“カンゴーム”と呼ぶこともあります。
ただし、どのスモーキークォーツでもそう呼ばれるわけではなく、一見“不透明に見えるほど黒に近いもの”をそう呼ぶ傾向にあります。
スモーキークォーツとケアンゴームとモーリオン
ケアンゴームは、黒に近い色をしていることから、モーリオンに分類されることがあります。
実際、モーリオンとスモーキークォーツの化学成分は同一であり、違いに関する境界線も曖昧なため、一目見ただけでは判別は難しいのです。
しかし、スモーキークォーツやケアンゴームは光に透かすことができ、モーリオンは不透明で光を当てても透かすことはできないという区別が主流になってきています。そのことから、光に透かしてみる方法で簡易に判別することができます。
和名では、どちらも黒水晶と記載されて販売されることも多い上記2種です。
パワーストーンとして石を求める際には、効果などの意味でこの違いが特に重要になってきますので、判別方法は知っておくと良いでしょう。
おもしろいスモーキークォーツ
色の付いたクォーツには、それぞれの色によって異なる宝石名が付いています。
例えば、紫は“アメシスト(アメジスト)”、黄色は“シトリン”などがそれです。
また、この2つの色は、どちらも鉄イオンによる色中心が要因のため、層になってひとつの宝石として産出されることがあり、“アメトリン”とも呼ばれています。
実は、この2つの層にスモーキークォーツの層が入ったものが、ボリビアのユールティ鉱山で採石されているのです。
めずらしい現象で、2本の並行に並ぶラインが石に面白い表情を与えているものです。こうしためずらしい宝石は、商品価値以上にオンリーワンの魅力があり、収集家の注目の的になっています。
価値
スモーキークォーツは、透明度が高く色は薄すぎず濃すぎないもの、インクルージョン(内包物)がなく、クラック(ひび割れ)や欠け、フラクチャー(内部亀裂)のないもの、色が均等で偏りのないものが原則として高評価になります。
また、いくつかのスモーキークォーツを組み合わせて作るジュエリーの場合には、色合いや透明度等がそろっているかも評価の対象になります。ただし、意図的に色合いを変えている作品についてはその限りではありません。
人工的な処理による価値
スモーキークォーツは、ローズクォーツやロッククリスタルなど、他のクォーツ類に放射線を照射することで作られることの多い宝石です。
しかし、その行為が人工的なものか天然のものかを鑑別することが鑑別機関でも困難なため、鑑別書には「通常、色の変化を目的とした人為的な照射処理が行われています」などと断りが記載されているのが現状です。
そのことから、放射線処理をしていることよって価値が下がることも、鉱山から直接仕入れたもので100%天然と分かっているものも価値に変動はほとんどみられません。
スモーキークォーツのフォールスネーム
スモーキークォーツは、クォーツの中では比較的産出量が少なく、宝石質(※2)で産出されることはまれな石です。
独特な奥の深いスモーキーな色合いや、大ぶりにカットされた石でも華美になり過ぎず、上品さを保ったままに人目を惹くことができるその特徴は、多くの人を魅了しています。
希少価値と美しさで、その価値は本来であればもっと上昇してもおかしくなかったはずなのです。
しかし、前項で挙げたように、クォーツに放射線を当てることで色が出せてしまうことから、他の宝石から比べるとリーズナブルな宝石という立場のままです。
そこで、一部の宝石商が考え出したのが、“スモーキートパーズ(Smoky Topaz)”というフォールスネーム(※3)です。珍しいトパーズということで、高値で販売したのです。
現在でも海外の一部では、このネームでの販売が確認されていますので、土産などで購入を考える際には価格帯に気をつけるようにしましょう。