樂吉左衛門十二代 の楽焼は豊かな色調が大きな魅力
樂楽吉左衛門十二代弘入は、楽焼の茶碗師として長く知られる樂楽家の生まれです。魅力あふれる赤楽や黒楽は、いまも高く評価されています。今回は、楽焼及び樂楽家の歴史を振り返りながら、十二代の魅力などについてご紹介します。
樂楽家は代々にわたる楽焼の茶碗師
樂楽家は、2019年で16代を数える楽焼の茶碗師。代々にわたり、樂楽吉左衛門を襲名しています。
最近の研究によれば、楽焼は中国明代の三彩陶にルーツがあると考えられています。三彩陶は中国唐代に生まれ、当時の貴族たちを魅了しただけでなく日本や朝鮮半島に広まり各地で模倣された焼物です。
現在、三彩陶の技法を明から日本に伝えたといわれる人物は渡来人の阿米也です。いまの南中国福建省あたりが出身と見られる陶工であり、楽焼の創始者となる樂楽家の初代長次郎の父にあたります。
時代が流れ1857年、幕末の政治の動乱期に十二代は樂楽家に生まれました。茶道に限らず伝統文化が衰退する時期でしたが、そのなかで多くの名品を生み出します。
楽焼の伝統的な特徴と十二代の魅力
楽焼の初期作品から見られる伝統的な特徴を挙げると、赤と黒に象徴される茶碗の色です。
当初、作品づくりは千利休が考えた意匠にもとづき長次郎の手で進められます。焼成温度が800℃ほどのときは赤く発色する赤楽、1000℃以上の高温になると黒に発色する黒楽が生み出されました。
その後は色合いが多彩になり、十二代の作品は同じ赤楽でも色調が変化に富みます。とくに軽やかな赤色は魅力があり、装飾的な箆使いも個性が感じられ特徴的です。
十二代は、まだ国内の政治情勢が落ち着かない明治初期の1871年に家督を継ぎました。その後、父の慶入とともに苦労の日々を重ねながらも生涯にわたり魅力ある楽焼をつくり続けました。
十二代の魅力が感じられる名品
樂楽吉左衛門十二代弘入の魅力が感じられる名品は、「赤楽茶碗 長次郎三百年忌」「三日月繪黒楽茶碗 寿賀」や「猿香合」です。
赤楽茶碗は、1890年に長次郎三百年忌の法要が営まれたとき記念として制作されます。その数は300碗に及び、十二代の技術力と忍耐力は高い評価を得ました。
黒楽茶碗は、黄ハゲ釉により三日月が描かれた逸品です。やや浅めで丸味を帯び、穏やかな雰囲気が感じられます。また、「寿賀」は弘入の妻の名前で、その妻に贈った事からこの銘がつけられました。猿香合は、猿の表情がユーモラスで楽しい作品です。
ほかには、「赤楽茶碗 亀背」「赤楽棗 碌々斎書付」「黒楽平茶碗 うず汐」「花筏香合」や「香炉釉算木四方水指」なども代表作として広く知られます。
十二代が残した茶道具はいずれも魅力にあふれ、買取では高評価を期待できます。買取査定をご希望の方は、ぜひ「なんぼや」までお持ち込みください。