増田三男は彫金師として活躍した工芸家|伝統を意識した作風が魅力
増田三男は、埼玉県に生まれ、彫金の分野で優れた才能を発揮した工芸家です。モダンな雰囲気の作品から日本の伝統を意識した作風に変わるなか、さまざま名品を生み出しました。今回は、増田三男の作品に見られる魅力や代表的な名品などについてご紹介します。
彫金師として活躍した増田三男
増田三男は、彫金師として活躍した工芸家です。その優れた感性や技術を生かし、数多くの名品を生み出しました。
彫金は、金属の表面にさまざまな彫刻を施す金工の一分野です。日本には古墳時代に伝えられたといわれ、かつては刀剣、装身具、甲冑(かっちゅう)、馬具や生活用品などを、多彩な彫刻模様で装飾しました。
主な伝統技法は、毛彫りや蹴り彫りです。毛彫りはもっとも基本的とされる彫り方で、鋭くとがったタガネでにより細かい線を彫ります。蹴り彫りは平らなタガネを使い、彫った後には楔形をした三角形の点が連続します。
室町時代には格式を重んじる作風が家彫として後世に伝えられ、近世になると自由な発想とデザインの町彫が生まれ、新たな流行として広まりました。
モダンから伝統を意識した作風へ
増田三男の作品は、最初のうちはモダンな雰囲気と評されますが、後に伝統を意識した作風へ変化します。
1909年、彼は埼玉に生まれ、20歳で当時の東京美術学校金工科彫金部に入学しました。在学中に著名な工芸家の清水南山や海野清に師事し、金工の腕を磨きます。
1937年頃の初期作品は鉄の廃材などを表現に取り入れ、モダンといわれました。1940年代の後半からは古文化財の模造に従事していたこともあり、日本伝統の自然をモチーフとした作品が主流になります。
壷、香炉や水指に金、銀や真鍮の打ち出し成形などを施し、兎・鹿・蝶や梅・柳などの身近な動植物を描きました。これらの作品は、いろいろな伝統技法により季節感が豊かに表現され、いずれも魅力にあふれています。
増田三男の名を広めた名品たち
増田三男の名は、彼が生み出した数多くの名品たちにより金工の分野で広く知られました。
初期作品としては、1933年の第14回帝展に初入選した「壁面燭台」が有名です。この作品は1937年発表の煙草セットとともにモダンな作風が感じられます。
伝統を意識した作風に変わってからは、生涯にわたり数々の名品を残しました。代表作は、日本伝統工芸展に出品された「金彩銀蝶文箱」や「彫金雪装竹林水指」などです。それぞれ同展で高く評価され、東京都教育委員会賞と朝日新聞社賞を受賞しました。
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