腕時計のGMT機能とは?タイムゾーンの同時表示が便利
腕時計などでよく見かけるGMT機能。複数の地域の時間を表示できることは知っているものの、その正しい意味などを理解している方は少ないでしょう。そこでここでは、GMTの基礎知識を解説します。
GMTとは?
GMTは、国際的な基準時刻のひとつです。正式名称はGreenwich Mean Time(グリニッジ平均時)といいます。GMTが基準にしているのは、イギリスにあるグリニッジ天文台を通る子午線(南北線)です。これを「平均太陽時」と呼びます。
詳しい仕組みについても見ていきましょう。太陽(恒星)と地球の自転の関係から計算をすると、年間を通じた1日の平均時間は24時間(8万6400秒)になります。しかし、恒星の運動を基にすると、季節によって1日の長さが変わってしまします。また、地球の自転速度も一定ではありません。こうした要素を踏まえて平均を割り出し、24時間を定義したものが平均太陽時です。
GMTはこの平均太陽時を採用し、グリニッジ天文台を基準とすることで時刻の基準を示しているのです。ちなみに、グリニッジ天文台の位置は大陸のプレート運動によって少しずつズレてしまします。そのため、現在は「IERS基準子午線」へと修正がされました。
現在の世界標準はUTC
GMTが採用している平均太陽時は、観測場所によって誤差が生まれてしまう不完全なものです。国際的な基準時間を示すためには、この誤差を修正しなくてはなりません。そこで生まれたのがUTC(協定世界時)です。
平均太陽時における1日の長さは、季節によって前後してしまいます。この調整を図るために、UTCは1秒の間隔をセシウム原子時計由来の国際原子時(TAI:temps atomique international)に揃えました。また、基準とするものをUT1(Universal Time 1)とし、TAIを同調させています。
ただし、UT1にも季節による1日の長さの誤差があります。そこでUTCは、3年に1度の頻度で「閏秒」と呼ばれる1秒間を挿入し、誤差の解消を図っています。
以前までは、前述のGMTが世界の標準時間でした。しかし現在は、より正確に時刻を示せるUTCへと世界の標準時が更新されたのです。
腕時計におけるGMT機能について
次に、腕時計におけるGMT機能を見ていきましょう。
GMT機能は、ローカルタイム(現地時間)とホームタイム(GMT)の両方を同時表示する機能です。なお、モデルによっては3地域の時間帯を同時に表示できるものもあります。
たとえば海外出張に出かけた際には、ホームタイムに日本の時刻を設定します。すると、腕時計を見るだけで日本の標準時刻を把握できます。
初のGMT機能はロレックス
世界ではじめてGMT機能を採用したのは、かの有名なロレックス。1955年発売の「オイスター パーペチュアル GMTマスター」に搭載されました。
なお、同モデルはそもそもパン・アメリカン航空の要望に合わせて作られているという経緯があります。各国を飛び回るパイロットや客室乗務員にとっては、着陸先の時刻が手元にあるのはとても便利でしょう。
ちなみに、1982年には「GMTマスター II」が発売されました。2019年には新モデルが発売されるなど、その人気の高さが伺えます。
日本時間がGMT+9の理由
次に、日本時間がGMT+9と表記される理由についても見ていきましょう。
日本の標準時間は、兵庫県にある明石市立天文科学館を通る東経135度線の時刻に設定されています。この時刻は、GMTにプラス9時間をしたものとなります。そのため、GMTで日本の標準時を表す場合は「GMT+9」になるのです。
まとめ
少し難しい話が続きましたが、内容としてはいたって簡単です。GMTは以前に使われていた世界の標準時刻のこと。その名残が、腕時計のGMT機能の名称に影響しているのです。時計購入の際、GMT機能を見かけた際には、ぜひ今回の解説を思い出してみてください。