ロレックスの価格高騰と相場の推移

かつて一般的な収入のサラリーマンでも少し頑張れば手に入れることができたロレックスの時計は、その実用性と性能の高さから、多くの人にとって機械式時計の入門用として最高の選択肢のひとつとされてきました。
いまや人気の高いスポーツモデルの主力機種に軒並み100万円前後と価格が高騰し、少なくとも入門用という言葉は、今のロレックスに当てはまるものではなくなったといえるでしょう。
高価になった、といわれて久しいロレックスの時計。その相場推移を見ながら、今後について考察してみましょう。
1.サブマリーナー デイトの実質売価が10年で2倍に
ロレックスの価格の高騰に対して時計ファンたちが不満の声を上げるようになったのは、いつ頃のことであったでしょうか。
2000年代半ば、並行店でのサブマリーナー デイトの新品の価格が50万円を初めて越えたのを目撃して、これも仕方のないことなのかと感じた記憶がありますが、現行モデルの販売価格が100万円を越える現在、日常生活の中でここ10年程度で倍の価格が付くようになったプロダクトがほとんど見当たらないが故、確かにロレックスの価格の高騰ぶりは特に目に付くように思えます。
2.実質的なものと感覚のギャップについて
サブマリーナー デイトは2010年にセラクロムベゼルやグライドロック・クラスプなど、はっきりとグレードの違いを感じさせる仕様変更を受けて、より充実したものへと進化しているわけですが、時計ファンたちからすればサブマリーナー デイトはやはりサブマリーナー デイト以上でも以下でもないという感覚を捨てきれていないことも影響しているのかも知れません。
さらには変える必要が有るところは変えても、変える必要のないところは変えない。このロレックスの伝統的手法は現代のロレックスのプロダクトたちが放つ強烈な魅力へと結びついているのは確かながら、その裏返しとしてコストがいくら高くなったとしても、その顔は基本的に不変であるがゆえに、同じ時計は同じ時計という感覚を捨てきれないファンを量産してしまっている一因に思えてなりません。
その一方で現行モデルのクオリティを考えれば、決して現在の定価が過去の定価と比較して不当なまでに高価になったとの評価をしている人も、そう多くはないとも思えます。
「なんぼや」のロレックス買取について
3.現行モデルの価格は流通全体の相場に大きく影響します。
しかし面白いもので、現行モデルの定価が上がれば中古市場にある旧モデルの価格もせり上がってしまう傾向にあり、これは当然ヴィンテージウォッチの価格にまで影響を及ぼすのです。
もともと流通の少なかった希少なヴィンテージのコレクターズアイテムたちが、歴代最高額の更新を頻繁に繰り返して国際的なオークションを盛り上げているのも、この全体的な価格のせり上がりと全くの無関係ということはないでしょう。
軍用サブマリーナーが4,000万円、オイスターダウンの6263が1億円突破、などと余りにも強烈な高額落札の連発は、時計ファンたちに対してロレックスの価格高騰をさらに強く印象付けています。
古くからロレックスに親しんできたファンたちが、新しくロレックスの時計を購入することに抵抗感を抱くようになったのも、致し方ないような気がしてなりません。
4.サブマリーナーデイトの相場の推移
実際の値動きの一つの例として、日本ロレックスのカタログに掲載されてきた相場価格の推移を改めて確認してみましょう。
ここでは長期間にわたって、最も落ち着いた人気を維持しているという観点でサブマリーナー デイトを取り上げています。
1995年頃 40.17万円 消費税3%の時代
1997年頃 45.15万円 消費税5%に増税
2000年頃 46.2万円
2003年頃 51.24万円
2007年頃 58.8万円
2010年頃 73.5万円 現行モデル、116610LNの登場当初の定価
2013年頃 78.75万円
2014年頃 81万円 消費税8%に増税
2015年頃 87.48万円 この価格で現在に至る
一方サブマリーナー デイトの並行店での売価は、比較的安定した需要と供給のバランスに支えられながら、大まかにいえば定価の5~10%程度下を中心に推移してきたという印象を持っています。
日本でロレックスのスポーツモデルの人気が高まりを見せた1990年代後半、ロレックスが生産するスポーツモデルの約半数が日本で消費されていたともいわれていましたが、その信ぴょう性はともかくとしても日本はロレックスの時計の消費国として、相当な上位にいたことだけは確かなようです。
2016年の秋ぐらいからロレックスのが全体的に品薄傾向となり、多くの並行時計店が十分な在庫を持てない状況が続いていることから、その後はじわじわと上がる一方の推移を見せています。
今やブランド単体として世界最大の売り上げ規模を誇るロレックスがここにきて生産数を減らすことは考えにくく、これは海外の需要が伸びて、日本の並行業者の取り分が減らされていると考えるのが妥当と思われます。
実際に2000年代半ば頃にGMTマスターの人気が急上昇したのはイタリアを中心としたブームがあったからであり、中国人観光客による爆買いも、決して日本だけで起きた現象ではなかったようであり、思い当たるだけでも沢山の要因が有るのが分かります。
並行店での今日現在の標準的販売価格が108万円ほど。これは定価の123.46%に当たります。
ブラックのサブマリーナーデイトの新品の価格が、ここまで定価と差がついた状態のまま推移している状況は、恐らくは初めてのことではないかと思われ、異常事態とも思えるのですが、それだけ日本以外の国での需要が高まっていると見るべきなのでしょう。
この状況はよほど大きな国際社会の動きでもない限り変わらないと思われますが、ロレックスの時計全てが時計に興味を持つ人々にとって手の届かない存在になってしまわないよう、願うばかりです。