ブレゲの評価は?世界5大時計ブランドに数えられるブランドの歴史と魅力
世界的に評価の高い時計ブランドと言えば、「パテック・フィリップ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」「オーデマ・ピゲ」「A.ランゲ・アンド・ゾーネ」、そして「ブレゲ」です。世界5大時計ブランドに名を連ねるブレゲには長い歴史があり、とくに創立者であるアブラアム=ルイ・ブレゲは数々の功績も残してきました。そこでこちらでは、ブレゲの歴史や偉業、評価など、その魅力について解説します。
ブレゲとは?歴史や逸話、語り継がれる評価について
世界5大時計ブランドのなかでも、もっとも古い歴史を持つのがブレゲです。創業は1775年と、すでに200年以上も前のこと。フランスのパリで誕生してから、現代に至るまで同じ場所で時計づくりを行っています。
大きな功績として語り継がれるのが、現代の機械式時計にも搭載されている複雑機構の発明・改良を行ってきた実績です。化学や天文学の知見を生かしたとされるその技術の見事さに、各国の王侯貴族は魅了されたとのこと。実際に、以下のような歴史に名を残した偉人たちも、ブレゲの愛用者だったと伝えられています。
- ヴィクトリア(イギリス女王)
- ジョージ4世(イギリス王)
- ジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニ(作曲家)
- ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世)
- カロリーヌ・ボナパルト(ナポレオンの末妹)
- ウェリントン公爵(イギリス)
- アレクサンドル1世(ロシア皇帝)
- マリーアントワネット(フランス王妃)
また、技術だけでなくデザインも大きな支持を集めており、いくつかの傑作については美術館に収蔵されるほどの完成度を誇ります。現代でも、シンプルなスポーツウォッチからエレガントなドレスウォッチまで、幅広いラインナップを生み出しつづけています。
ちなみに、現在のブレゲはオメガなどを傘下とするスウォッチ・グループに所属。しかし、創業者であるアブラアム=ルイ・ブレゲの遺志はしっかり時計づくりに受け継がれています。
創業者であり天才時計技師のアブラアム=ルイ・ブレゲ
ブレゲの創業者であるアブラアム=ルイ・ブレゲは、誰もが認める天才時計技師です。現代においてもその偉業は評価され続けており、「時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と証されることも少なくありません。
その理由は、アブラアム=ルイ・ブレゲの発明の数々です。詳しくは後述しますが、今なお機械式時計の基礎とされる「トゥールビヨン」や「パーペチュアルカレンダー」(永久カレンダー)などを生み出した功績は絶大であり、「時計の歴史を2世紀早めた」と評価されています。一説では、機械式時計に搭載される機構の約7割を、アブラアム=ルイ・ブレゲが発明したり改良したりしたとも言われます。
ブレゲの歴史〜衰退と復興〜
ここからはより詳しくブレゲの歴史について掘り下げていきましょう。
ブレゲのはじまりは1775年。パリ発祥の地としても知られるシテ島に、アブラアム=ルイ・ブレゲが工房を構えました。当時は現在のような腕時計ではなく、懐中時計をフランスの貴族たちに向けて製造していました。
1780年、ブレゲはスイスの職人たちが成し得なかった自動巻き上げ機構の「ペルペチュエル」実用化という偉業を達成。それまで開発が進んでいた機構に改良を加えたことで実用化に成功し、王侯貴族の間でも広く知られる存在になります。
その後もブレゲの発明・開発は続きます。1783年の時刻を音で知らせる「リピーターウォッチ用ゴング」。1790年の衝撃吸収装置「パラシュート機構」。1795年の永久カレンダー「パーペチュアルカレンダー」。1801年の計時調整機構「トゥールビヨン」。重ねてにはなりますが、これらは現代の機械式時計にも搭載されている機能ばかりです。
また、1801年にはナポリ女王のための時計を製作しますが、これは記録上、世界初の腕時計とも言われています。こうした実績を並べるだけでも、いかにブレゲが時計づくりのパイオニア的存在であるかが伺い知れるでしょう。
しかし、1823年になると、創設者であるアブラアム=ルイ・ブレゲがパリでその生涯を閉じることになります。工房は子孫であるアントワーヌ=ルイ・ブレゲとルイ=クレマン・ブレゲが継承することになりましたが、その後の1870年に、イギリスの時計技師であるエドワード・ブラウンに売却されました。残念ながらブラウンによる経営はうまくいかず、徐々にブレゲは時計業界における存在を薄めていくことになります。
そこから長い年月が経った1970年。フランスの宝石細工商、ショーメがブレゲの商標を買い取ります。これが、ブレゲ復興のきっかけとなりました。もっとも大きな要因は、ショーメに在籍していたダニエル・ロートの存在です。彼はブレゲが開発したトゥールビヨンのサイズダウンに成功。これが起点となり、ブレゲは再び注目度を増していきます。
1976年には、スイスのジュウ渓谷へと工房を移転。ここは時計の一大産地としても知られる場所であり、ブレゲが復興してきたことがよく分かる軌跡です。そして1999年には、ニコラス・G・ハイエックのスウォッチ・グループがブレゲを買収。大資本をバックに付けることで、安定した経営環境が整い今に至ります。
ブレゲとマリーアントワネット
次に、ブレゲの偉大さを裏付ける逸話をひとつご紹介します。
ブレゲが生涯のなかでもっとも大きな顧客としていたのが、フランス国王ルイ16世の王妃であるマリー・アントワネットです。王妃は時計に対しての高い熱量を持っていたとされ、世界で最高の時計を手に入れたいと考え、その製作をブレゲに依頼しました。これが、今なお伝説として語り継がれている超複雑懐中時計「No.160」です。
マリー・アントワネットがブレゲを知ったのは、ミニッツリピーター用ゴング式リピーターを備えた懐中時計がきっかけでした。ひと目見るなり、王妃はブレゲの時計の美しさの虜になったそうです。その後、王妃はすべての複雑機構を詰め込んだ、世界最高の懐中時計「No.160」をブレゲに依頼しました。
結論から言うと、「No.160」はパーペチュアルカレンダーやミニッツリピーター、トゥールビヨンといった超複雑な機能のすべてを搭載した、至高の時計として完成します。間違いなく、ブレゲにとっての最高傑作とも言えるでしょう。
しかし、この最高傑作が完成したのは1783年の注文から44年後。すでに、王妃が亡くなってから34年が経過したタイミングでした。さらに、アブラアム=ルイ・ブレゲも1823年にはなくなっており、製作は弟子が引き継いだという経緯があります。世界最高の時計を求めた王妃と、最高の技術を持った技師は、皮肉なことに「No.160」を目にすることなく、この世を去ったのです。
なお、2008年にブレゲは「No.1160」というモデルを開発します。これは、マリー・アントワネットの「No.160」を現代に蘇らせた復刻版です。製作には4年の歳月がかけられたそうです。
時計づくりに技術革新をもたらした評価されるべきブレゲの発明
アブラアム=ルイ・ブレゲは生前、時計づくりに関するさまざまな技術革新をもたらした点が、後世からも高い評価を受けています。以下からは、彼が発明・改善した代表的な技術をご紹介します。
トゥールビヨン
トゥールビヨンは世界3大複雑機構のひとつとも言われる仕組みです。開発当時、アブラアム=ルイ・ブレゲは時計の装着時、姿勢が変わることで重力による計時調整に影響が出ると考えていました。これを回避するために発明されたのが、時計の向きにかかわらず精度が保たれるトゥールビヨンです。特殊な構造によって垂直方向にかかる重力が分散され、姿勢差によるズレをキャンセルします。なお、機構は非常に複雑であり、当時はトゥールビヨンを製造できる技師が世界でも10人しかいない、と言われていました。
パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)
日本語で永久を意味する「パーペチュアル(perpetual)」を冠したカレンダー機能です。これはつまり、長期(4年)にわたり日付のズレがなく、調整が不要となるカレンダーを表しています。デジタルウォッチであればとくに難しくはありませんが、アナログ方式の機械式時計でこれを実現するのは大変難しく、大量の情報量を構築するため仕組みも複雑となります。なお、初のパーペチュアルカレンダーは1795年に懐中時計へ搭載されました。腕時計に搭載されたのは1925年です。
ミニッツリピーター
時刻を鐘を用いて告げるという機能で、こちらも世界3大複雑機構のひとつです。元は17世紀末のイギリスで発明されましたが、アブラアム=ルイ・ブレゲはこれを小型化。ミニッツリピーターを腕時計へと詰め込みました。
ミニッツリピーターの魅力はその構造美と複雑さにあります。機構のなかにはゴングとハンマーが入っており、それらが衝突することにより時刻をお知らせしてくれます。しかし、時計には耐久度や精度が求められますから、実用性とのバランスも課題でした。ブレゲは高い技術力や膨大な作業時間を使い、この機構を完成させました。
パラシュート
パラシュートは、時計にかかる衝撃を吸収するための機構です。現代の引火ブロック機構および、時計の耐衝撃構造の基になったとも言われる発明です。開発のはじまりは1970年。ブレゲはこの機能のテストを開始しました。22年後には、同年以降に発売されるすべての「ペルペチュエル」に対して、パラシュートが採用されています。ほかのモデルにも順次採用されるようになり、1806年に行われた全国博覧会にて完成品が展示されました。
ブレゲひげゼンマイ
1675年にオランダの数学者ホイヘンスが発明した平ひげゼンマイを改良し、それまで課題であったひげゼンマイの同心円状展開を解決しました。これによって時計の精度は飛躍的に高まり、テン輪の中心軸の摩耗速度も緩やかとなったのです。なお、ブレゲひげゼンマイは、現時aもすべての高級時計製造会社が採用している技術で、高精度のタイムピースに搭載され続けています。
愛好家が評価するブレゲの魅力とは?
長年の歴史のなかでブランド力を高め、かつ間違いのないクオリティの時計をつくり続けてきたブレゲ。すでにこの時点で魅力溢れる時計メーカーだと分かりますが、次は愛好家の目線でその素晴らしさを考えてみましょう。
ブレゲだけが創り出せた美麗なデザイン
ブレゲは技術力の高さだけでなく、デザインの美しさにも評価が集まります。その代表とも言えるのが、すでにご紹介した「ブレゲ針」や「ブレゲ数字」「ブレゲ数字」「ギヨシェ文字盤」といった数々の意匠です。
ブレゲ数字は、アブラアム=ルイ・ブレゲが考察したデザインのひとつで、アラビア数字をより洗練させたいという想いが込められていました。ギヨシェ文字盤は、ギヨシェ彫りを用いた美しくも機能的な意匠です。光の反射が抑えられることで視認性が高まり、かつ表面の経年劣化を防げるというメリットは腕時計に最適で、現在も多くの高級時計に採用されています。
また、ケース側面に凹凸を設け、エレガントさを演出する「コインエッジ」なども特徴のひとつ。こうしたブレゲ独自のデザインは、多くの愛好家にとってなくてはならない魅力のひとつです。
世界にひとつだけを所有できる喜び
ブランドとしてのブレゲの評価の高さは多くの人が知るところです。だからこそ、ブレゲを所有しているということはステータスであり、喜びとも言えます。
その気持ちをより高めてくれるのが、腕時計に付された個別の識別番号です。識別番号の制度が開始されたのは創業間もない頃であり、その当時のモデルを含め、現在もすべてブレゲが管理を行っています。非常に長い歴史の積み重ねと、その伝統を守る姿勢は、多くの愛好家からも好評です。また、偽造品対策として使われているシークレットサインも、ブランド価値を担保しようと考えるブレゲの真摯さが伺える取り組みのひとつと言えるでしょう。
流行に流されない価値
ブレゲは超高級時計ブランドのひとつではあるものの、たとえばロレックスなどの人気ブランドに比べると、目立つ存在とは言えないでしょう。しかし、それはブレゲの評価を落とす理由にはなり得ません。それを理解するためには、購買層の違いについて目を向ける必要があります。
そもそもロレックスは、高級時計でありながらも主な顧客層は一般庶民でした。だからこそ幅広い層——とくに若い世代から支持されてきたいという歴史があります。現在でも、ロレックスは若いビジネスマンが自身のステータスアップの証として所有する、といった傾向にあります。また、若い世代は流行に対する意識が高いため、旧モデルを売り、最新モデルを買うといった行動をおこします。ロレックスが買取市場を賑わせるのには、こうした理由もあるのです。
一方、ブレゲが元々顧客としてきたのは上流階級の層です。20世紀以降に関しては一般層に向けたモデルも発売されるようになりましたが、それでもイメージとしては“ハイクラス”という文字が浮かぶでしょう。また、購入層の多くはブレゲのファンである、という人が多い印象です。こうした背景を踏まえると、ブレゲが世界5大時計ブランドに名を連ねるものの、中堅クラスの人気に甘んじている理由が見えてくるのではないでしょうか。
しかしこれは「愛好家が多く、流行によって価値が左右されにくい」とも言い換えられます。実際に、ブレゲの人気モデルにおける買取相場は上昇傾向で、大きな下落なども見られません。流通量が少ないのは、愛好家たちの強い愛着を感じさせます。また、近年では若い世代にも人気が広がってきているとも言われています。
ブレゲはロレックスのような派手さはありません。しかし、顧客層が安定しており、資産として所有することもできるブランドである、と言えるでしょう。
ブレゲを代表するコレクション・モデル5選
ブレゲにはマリーン、トラディション、クラシック、ヘリテージ、タイプ XXという4つのフラッグシップコレクションがあります。コレクションごとの特徴と、おすすめのモデルをご紹介します。
マリーン コレクション
1815年にルイ18世から依頼を受け、フランス海軍のマリン・クロノメーター製作をはじめたブレゲ。これは当時の時計技師にとって、最高の栄誉だっとた言います。マリーンコレクションは、当時のをマリン・クロノメーターオマージュしたコレクションです。
マリーン トゥールビオン エクアシオン マルシャント 5887
「トゥールビヨン」「永久カレンダー」「イクエーション・オブ・タイム」など、豪華な機能が詰め込まれたモデルです。ムーブメントの背面にはフランス王国海軍戦艦ロワイヤル・ルイの艦影が掘られています。高い機能性とエレガントなデザインが共存する、ブレゲらしい1本と言えるでしょう。
トランジション コレクション
クラシカルなフォルムのなかに詰められた大胆なダイアル構造が魅力のトランジション。ムーブメントを鑑賞する楽しみを与えてくれる、時計好きにはたまらないコレクションです。
トラディション7067
ローカルタイムとホームタイムを、手彫りのギヨシェ模様が施された2つのダイヤルで表示するGMTモデル。小型化されたダイヤルはオフセンターに配置され、それがブレゲらしさを感じさせます。
クラシック コレクション
クラシックは、ダイヤル装飾に力を入れたコレクションです。シンプルでありながらも洗練されたデザインには、高い評価が集まります。
クラシック 5177
シンプルな3針モデルで、エレガントな装飾が目を引く1本です。ケースには18Kホワイトゴールド、ローズゴールド、イエローゴールドの3つが用意されているほか、ギヨシェ文字盤はもちろん、グラン・フーのホワイトエナメルおよびブルーエナメル装飾が施されたモデルも販売されました。
ヘリテージ コレクション
20世紀初頭に誕生した樽型のクラシカルなケースを用いたコレクションです。ユニークな「トノーカンブレ型」が採用されており、古典的かつ優雅な佇まいが印象的です。
ヘリテージ 5410
シルバーカラー仕上げの18Kゴールドのダイアルに4種類のギヨシェが施され、かつブレゲ文字盤の美しさを楽しめるモデルです。ダイヤル形状に合わせた膨らみを持つインデックスも特徴的。ホワイトゴールドとローズゴールドの2色がケースとして展開されています。
タイプ XX コレクション
ブレゲが時計メゾンとして航空航法用クロノグラフの開発に着手したことをルーツに持つコレクションです。「タイプ XX」は、1950年代、フランス空軍の要請により誕生しました。
タイプXXI トランスアトランティック 3810
第1世代のタイプ XXのデザインを思い出させるモデルでs。機能面についてはタイプ XXI 3817とほぼ同じですが、デザインはクラシカルかつエレガントなのが特徴。ステンレススティール、チタン、ローズゴールド(限定モデル)の3種類が用意されました。
評価を高め続けるブレゲの時計づくり
洗練された造形美と機構、長い歴史のなかで積み重ねられた実績は、ブレゲならではの魅力です。創業者であるアブラアム=ルイ・ブレゲの偉業はもちろん、今後もブレゲの時計づくりに対する真摯な姿勢は、後世に語り継がれ評価を高めていくことでしょう。