デイトナ「コスモグラフ」が開発された理由はアポロ計画にあった!
ロレックスの新たな取り組みとして、1950年代に展開されたコスモグラフ。宇宙開発に関心が高まっていた当時、ムーンフェイズやカレンダー機能を搭載し、宇宙飛行士のプロフェッショナルウォッチとして開発されましたが、実はこの時、ロレックスには大いなる野望がありました。それは、アポロ計画の公式腕時計に採用されること。今ではレーサー仕様として展開されているデイトナですが、歴史をひも解くと、もともとは宇宙飛行士仕様として開発されていたのです。
1950年代に開発されたコスモグラフ。これはデイトナの前身となる時計であり、宇宙飛行士のために作られたプロフェッショナルウォッチでした。つまり、現在のコンセプトである「レーサー仕様」とはかけ離れた存在だったのです。コスモグラフとは何かを正しく理解するために、性能などの特徴に加え、開発理由やロレックスの思わくなど包括的に知っておきましょう。
宇宙開発の成功への期待を込めて開発されたコスモグラフ
1961年から1972年にかけて合計6回もの有人月面着陸に成功し、人類史における科学技術の偉大な業績として現在まで語り継がれているアポロ計画。それ以前には、人間を地球周回軌道上に送り安全に帰還させることを目的としたマーキュリー計画(1959-1963)が実施されるなど、この時代はまさに宇宙開発の黄金期でした。そんな時代の流れに乗り、ロレックスは星形のインデックスにムーンフェイズ機能(月齢表示機能)とカレンダーを搭載したコスモグラフ(通称:ムーンスター)を開発。月齢や月の満ち欠けを表示させるムーンフェイズは、精度を求めると非常に高い技術力を要する機能であり、当時のロレックスのそれは他を寄せつけないほどの精度を誇る、宇宙飛行士にとって必須とも言える時計でした。
宇宙飛行士の公式腕時計、採用への取り組み
ロレックスは何も宇宙開発の成功のみを祈願してコスモグラフを開発したのではありません。実は、アポロ計画の宇宙飛行士の公式腕時計として採用してもらおうという狙いがあったのです。ロレックスはそれまでにさまざまな分野において公式時計に採用された実績があり、一種の広告塔を入手することでばく大な富を生み、プロフェッショナルウォッチとして確立することを熟知していたため、コスモグラフの開発には公式時計の採用への思わくが存在していたのです。この時、コスモグラフのほかに、アポロ計画の公式時計の候補に選定されていたのは、オメガのスピードマスターとロンジンのクロノグラフ。ロレックスのコスモグラフは惜しくもスピードマスターの前に敗れてしまい、これをキッカケに宇宙飛行士に向けたプロフェッショナルウォッチの開発を中止。そしてその後、ロレックスは宇宙から陸へと視点を変更し、高速走行に耐えうることのできる耐久性と高い計測精度を誇るクロノグラフの開発に取り組み、コスモグラフはレーサー仕様のプロフェッショナルウォッチとして宣伝するようになったのです。
現在ではレーサー仕様として展開されているデイトナですが、このように、もともとは宇宙飛行士に向けて開発されたモデルでした。オメガのスピードマスターがアポロ計画の公式時計に採用されたことで、今や「オメガ=宇宙飛行士」という認識が定着していますが、当時のロレックス社のコンセプトの迅速な方向転換により、「デイトナ=レース」という認識が定着し、現在の爆発的な人気につながり、大きな成功を収めたのです。
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