腕時計に使われている電池は、一般的電化製品に使われる電池同様、使い方や保管方法などによっては液漏れを起こしたり、発熱・破裂したりといった大きなトラブルを引き起こすことがあります。
場合によっては時計の故障だけにとどまらず、怪我や事故などへ発展する可能性も考えられます。
しかしそういったトラブルには必ず原因があり、それを理解することで未然に防ぐことも可能です。
そこで今回は電池の液漏れや発熱・破裂の原因について、対策方法を交えて詳しくご紹介いたします。
▼ 時計修理のLINE見積もりはこちら!
腕時計に使われる電池の種類と特徴
腕時計に使われている電池は、1種類ではありません。
大きく分けると「酸化銀電池」と「リチウム電池」という2種類の電池が使われています。
腕時計の電池としては酸化銀電池が使われることが多いのですが、リチウム電池の方が電池容量は2倍近く大きく、電力消費の多いデジタルタイプの腕時計に使われることが多いことが特徴です。
それぞれ性質も違いますので、使用される目的も異なってきます。
まずは、それぞれの電池の特長について解説していきます。
酸化銀電池
酸化銀電池は「銀亜鉛電池」とも呼ばれ、小型の電子機器に使用されることが多い電池です。
長期保管に優れた電池であることも一つの特長ですが、電圧が安定しているということが最大の特長でもあります。
電池容量の寿命になる直前まで、新品時とほぼ同等の電圧を保つことが可能なため、常に正確な動きが求められる腕時計には最適な電池だといえるでしょう。
腕時計の他にも電子体温計やカメラの露出計など、デリケートな電子機器に多く採用されています。
酸化銀電池の組成は、次のようになっています。
- 正極:酸化銀
- 負極:亜鉛
- 電解液:水酸化カリウム、または水酸化ナトリウム
リチウム電池
リチウム電池は小型電池にもかかわらず高い電圧を誇り、大きな電流で長持ちする電池という特長があります。
さまざまな形状の電池が開発されており、腕時計以外にも多くの用途で使われています。
コイン型のリチウム電池が使用される代表的なものは、携帯ゲーム機や電子手帳、車のキーレスなどです。
ピン型リチウム電池は、夜釣りで使われる電気浮きの電源などに使用されています。
ペーパーリチウム電池は、メモリーカードやICカードなどの薄型の製品に使われます。
リチウム電池は長持ちすることから、一般的に5年以上は交換なしでも使用可能でしょう。
自己放電が少ないこともリチウム電池の特長で、長期的信頼性が求められる機器にもよく使用されます。
リチウム電池の組成は次のとおりです。
- 正極:二酸化マンガン
- 負極:リチウム
- 電解液:有機溶媒
電池の液漏れが起こる原因と対策
腕時計の電池が液漏れを起こすには、原因があります。
ほとんどの液漏れが同じ原因で起こっているのが現実で、少しの気遣いで避けることができるため、腕時計を所有する人にとっては最低限の知識として知っておきたいところです。
原因
電池の液漏れが起こる主な原因は、過放電によるものです。
多くの場合は、電池が切れた腕時計をそのまま長期間放置してしまうことで、微量ながら電気が放電され、水素ガスが発生し、内圧が上昇した結果、安全弁から水素ガスが放出され、その際に電池のアルカリ液も同時に放出されることで液漏れを起こします。
この液漏れは電池の破裂を防ぐために、故意に作られた構造です。
また電池が残っている腕時計の竜頭を引いて、止まった状態のまま長期間保管することも液漏れを起こす原因となりますので、注意が必要です。
液漏れを起こす電池の特徴としては、国内メーカーの電池よりも海外の電池の方が確率は高い傾向にあるようです。
対策
液漏れを未然に防ぐ対策として、クォーツ時計の保管は高温多湿の環境を避けることがまず大切になってきます。
そして電池が切れた腕時計は、なるべく速やかに新品電池と交換することが大切です。
あまり使うことのない腕時計の場合、電池だけを抜いた状態で保管するということも、液漏れを防ぐという点では一つの方法ではありますが、いざ使おうと思ったときに電池を入れても動かないといった状態になることがありますので、注意が必要です。
これは腕時計を長い期間動かさなかったことで、油切れを起こしてしまうことが原因となりますので、あまり使わない時計だとしても電池交換は行うことをお勧めします。
液漏れした時計のその後
電池の液漏れを起こしてしまった腕時計を、そのまま使い続けることは難しい場合がほとんどです。
液漏れの度合いにもよりますが、時計内部のムーブメントにまで液体が流れてしまった場合は自分で対処することは難しく、基本的に専門家による分解掃除(オーバーホール)が必要となるでしょう。
しかしこの分解掃除には、それなりの費用が必要となります。
高級な時計や特別に大切な時計であれば、お金をかけてでも分解掃除をする価値はありますが、低価格で購入した時計であれば、分解掃除よりも新品に買い替えた方が安く済む場合もあるでしょう。
自分にとってその時計がどういった時計なのかをしっかりと考慮し、分解掃除をして使い続けるのか買い替えるのかを、よく検討することをお勧めします。
ただ、本当に大切にしている時計なのであれば、液漏れを起こすような環境で保管しないよう、日ごろから気を使って大切に使うことが本当の意味でお勧めです。
電池の発熱・破裂が起こる原因と対策
電池は使い方によって、発熱や破裂などの危険なトラブルを起こす可能性があります。
小さな電池でも大きな電力を秘めていますので、軽率な取り扱いをしますと事故につながる危険性もあります。
特にリチウム電池はショートさせると激しく破裂する可能性もあり、非常に危険です。
しかし正しい使い方をしていれば、そういった大きなトラブルが起こることは考えにくいので、発熱や破裂が起こる仕組みを理解することで、そういったリスクは避けられるでしょう。
発熱・破裂が起こる原因
発熱や破裂が起こる原因としてよくあるパターンが、+-(プラス・マイナス)を反対に入れてしまうということがあります。
電池を反対に入れてしまうと電池が異常反応を起こして、発熱や破裂につながる可能性があります。
また、電池を5~35℃の常温から外れた温度の場所に長期間保存することも、原因となることがあるので注意が必要です。
対策
発熱や破裂を起こさないための対策としては、高温多湿な場所での保管を避け、正しい電池の使い方をすることです。これが電池の発熱や破裂トラブルを防ぐ方法といえます。
電池の基本的扱いを間違えないためにも、腕時計の電池交換は自分で行わず、時計修理専門店に依頼することが、こういったトラブルを未然に防ぐことにつながるでしょう。
どんな電池でも液漏れの可能性はある
腕時計の場合、輸入商品に最初から入っている電池は海外製のものですので、国内産電池と比べ、液漏れしやすい傾向にあります。
格安で販売されている電池も同様、海外製なのでその傾向が強くなります。
海外製の時計を購入した場合は、早めに日本製の電池に交換することも一つのリスク回避の手段です。
しかし国内産の電池だからといって、絶対に液漏れしないというわけではありません。
国内の有名メーカーの電池でも、実際に液漏れは起こります。どこのメーカーの電池でも、正しく使用しなければ液漏れなどのトラブルは起こってしまうということです。
ただ、液漏れ防止設計の電池は普通の電池よりは液漏れしにくい設計になっていますので、液漏れのリスクを下げたいのであれば、国内産の電池を使用することは選択肢の一つとしてみるのも良いでしょう。
電池の模造品には注意が必要
あまり知られていませんが、電池にも模造品が存在します。
一見普通の電池と何の変哲もないような電池なのですが、寿命が極端に短かったり、液漏れなどのトラブルを引き起こしたりする可能性が高くなります。
こういった模造品電池は基本的に海外で作られており、SONYなど信頼あるメーカー名を電池表面に記載して、販売していることが特徴です。
もちろん記載されているだけで、そのメーカーとは何の関わりもない商品であり、その品質もとても同等とはいえません。
最初から疑っていない限り、一目見ただけでは気づきにくいでしょうから、つい模造品を購入してしまう人が後を絶ちませんが、よく見てみますとおかしな記載があったりします。少しでも違和感を抱いたら、しっかりと確認をするようにしましょう。
特に大手メーカーの商品名で格安に大量販売されている場合などは、よく注意して確認することをお勧めします。
こういった模造品電池を使用してしまうことで液漏れなどを起こし、大切な時計を故障させてしまっては大変です。
基本的に腕時計の電池交換を自分で行うことはお勧めできませんが、もし自分で行う場合はこういった電池選びにも細心の注意を払うことが、トラブルを未然に防ぐ意味では大切なことといえるでしょう。
電池の使用推奨期限を守って使う
寿命がある製品には必ず使用期限というものが存在しますが、電池にも使用推奨期限というものが存在します。
これはこの期限内に使用を開始すれば、その電池が本来持っている性能を最大限に発揮できるという意味を持ちます。
この期限を過ぎたからといって、すぐ極端に性能が低下することはありませんが、日がたつほどに本来の力を発揮できなくなっていくことは事実です。
単純に電池のもちが悪くなるだけであれば、大きな問題はないかもしれませんが、期限を過ぎてしまった電池は、物理的劣化が起こる可能性が考えられます。安全弁の劣化など、液漏れが発生しやすくなるというリスクが考えられます。
そのようなリスクを踏まえますと、電池は使用推奨期限をしっかりと守って使用することが、電池トラブルの回避につながります。
液漏れした電池に触れてはいけない
万が一、電池が液漏れしてしまった場合、その電池に素手で触れることは危険です。
電池の中から漏れ出ている電解液に触れてしまった場合は、速やかにきれいな水でしっかりと洗い流しましょう。
漏れ出た電解液が衣服に付いた場合も、すぐに洗濯すれば特に問題はありません。
手に触れたくらいであれば洗い流せば、ほぼ問題はありませんが、目に入ると失明などの危険性も出てきますので、もしその手で目をこすってしまったりした場合は、早急に医師の診察を受けることをお勧めします。
小さなお子さんがいる場合などは特に注意が必要で、電池が液漏れを起こした場合は手の届かない場所に保管し、目や口に入らないよう細心の注意を払いましょう。
液漏れした電池はもう使用することはできませんので、速やかに処分することで二次被害を避けることにもつながります。
こういったリスクを負わないためにも、安易な気持ちで時計の分解を行わないことも大切なことです。
まとめ
腕時計の電池トラブルは、場合によっては大きな事故にもつながる危険性があります。
興味本位な気持ちだけで時計の分解・電池交換を行いますと、電池の液漏れなどに遭遇した際、適切な対処ができないこともあるでしょう。
電池は私たちの生活の中で非常に身近なものになっていますが、その使い方次第では便利なものが危険物へと変貌してしまう可能性もあるのです。
しかし、基本的なポイントを理解して正規品を正しく使用していれば、そういったトラブルのほとんどは回避可能なのも事実です。
大切な時計を長く使い続け、自身を守る意味でも電池についての正しい知識を身に付けておくことは、とても大切なことだといえるでしょう。