腕時計の電池交換方法と手順

腕時計の電池が切れてしまったとき、一般的には購入した時計屋さんや時計修理専門店に電池交換を依頼する人が多いと思います。
しかし、どういった手順や方法で自分の腕時計の電池交換が行われているかまでは、なかなか分からないものです。
腕時計の種類によっても電池交換の方法は少しずつ異なりますが、どういった工具が使われどのようにして電池交換が行われるのかを、手順に沿って注意点も含めご紹介いたします。

▼ 時計修理のLINE見積もりはこちら!

ベルト開き

腕時計の電池交換を行うには時計本体の裏蓋を外さなければなりませんが、その作業をするにはベルトが邪魔になってしまいます。
革ベルトの時計であれば開いた状態にしておけば問題ないのですが、金属ベルトの場合はそうもいきません。
金属ベルトを開くには中留め部分のバネ棒を抜くか、もしくはサイズ調整ピンを抜くことで革ベルトのように開いた状態にすることができます。
また、G-SHOCKのように時計によっては、ベルトを完全に外してしまわなければならないタイプも存在します。
こういったタイプはベルトが裏蓋を抑えてしまっていますので、まずはベルトを外してからでないと裏蓋が外せない作りになっているのです。
ベルトの外し方は、本体とつながっている部分のバネ棒を外せば簡単に外すことができますので、特に技術的に難しい作業ではありません。

裏蓋を開ける

ベルトを開くことができたら、次は裏蓋を外していく作業となります。
裏蓋には時計により種類があり、それぞれ外し方も異なるので種類別にご紹介します。

スクリュータイプ

スクリュータイプの裏蓋はオープナーと呼ばれる工具を使い、回すようにしながら外します。
まずは時計を保持器にしっかりと固定し、オープナーの幅を時計の幅に合うように調節。
裏蓋の脇にある溝の部分にオープナーの突起部をしっかりと引っ掛け、反時計回りに回しながら外します。
ポイントは下向きに少し力を加えながら回すことです。
しかし力の加え過ぎは裏側のガラス面にダメージを与えてしまう恐れがあるので要注意で、裏蓋が硬くて外れにくい場合の作業は慎重に行う必要があります。

こじあけタイプ

こじあけという工具を使用して外していく裏蓋が、こじあけタイプです。
防水機能が付いていない腕時計に多いこのタイプは、こじあけ工具の先端を裏蓋と本体の間にある溝に差し込み、テコの原理で外します。
慣れていない人が行うと工具を滑らせて時計に傷をつけたり、手を怪我したりすることにもつながるので注意が必要です。
きちんと溝の幅に合ったこじあけを使うことが、うまく外すポイントです。

ネジ式タイプ

ネジ式タイプの裏蓋の取り外しは比較的簡単で、ドライバーでネジを緩めるだけで外すことができます。
ネジを緩めるときは対角線上にいったん仮に緩めてから、再度完全に緩めて抜くようにすることでネジや裏蓋への負担を少なくします。
締めるときも同様の手順でネジを締めていきます。
ネジに接着剤が付いている場合やさびている場合などは、最初に緩めるときに硬くてネジが回らないことがありますが、力任せに回してネジ山を潰してしまわないように注意が必要です。
下方向に適度に力を加えながら、少しずつ回すと硬いネジも外れやすくなります。

中枠を外す

多くの腕時計では裏蓋を外しますと、中枠と呼ばれる白いカバーがあります。
このカバーの形状は時計によってさまざまですが、電池が隠れているタイプと隠れていないタイプが存在します。
隠れていなければそのまま電池を外していけばいいのですが、問題は中枠で電池が隠れている場合です。
この場合、中枠を外さなければ電池を外すこともできませんので、まずは中枠を外すことから始めていくことになります。
中枠はピンセットでつかんで外すことができますが、中枠の奥にあるムーブメントまで一緒に外れてしまうことがありますので、ムーブメントの中央部を軽く押さえながら外す必要があります。

古い電池の取り外し

裏蓋を外し中枠も外しますと、ようやく古い電池の取り外しとなります。
腕時計の電池はボタン電池が使われていますが、そのボタン電池は爪が引っかかるように固定されています。
その爪を無視して力任せに外そうとしますと、爪が壊れてしまう原因になるので慎重な作業が必要です。
まずは爪が引っかからないように、ピンセットで避けてから電池を取り外すことになります。

時計によっては、リード板と呼ばれるプレートで電池が固定されているタイプもあります。
精密ドライバーで小さなネジを外すデリケートな作業になるため、一般的な爪で固定されているタイプのものよりも取り外しに技術が必要で、プロの職人さんでなければ難しい作業となります

内部の掃除と新しい電池の取り付け

古い電池を取り外したら、まずは軽く内部の掃除をしていきます。
基本的に腕時計の裏蓋を開けることは滅多にないことですので、内部の掃除をする貴重なチャンスですし、電池の接触をよくするためにも電池の接触部を掃除することは大切な作業です。
綿棒などで軽く汚れを取っていきますが、掃除とはいえデリケートな時計内部の作業になりますので、無理に力を加えないよう慎重に行っていく必要があります。

内部の掃除が終われば、新しい電池を取り付けます。
電池の取り付けは取り外しと逆の工程で作業をしていくことになりますが、爪の扱いなどデリケートな作業が続きます。
時計内部の作業は基本的にすべて強い力を加えないことが鉄則で、細心の注意が必要な工程です。

ゴムパッキンにシリコングリスを塗る

新しい電池を取り付けたら、裏蓋を閉める前にゴムパッキンにシリコングリスを塗ります。
ピンセットで裏蓋からゴムパッキンを外し、塗布器というシリコングリスを付ける道具を使って塗っていきます。
時計によってはプラスチック製のパッキンが使われていることがありますが、この場合はシリコングリスを塗る必要はないので汚れを取る程度で問題ありません。

デジタル時計はリセット作業を

デジタル時計の場合は、電池を交換したらリセット作業が必要となります。
リセット作業は強制的に機械を再起動させる方法で、ピンセットなどの電気を通す工具を使用して複数の指定箇所を接触させてショートさせます。
指定の接触箇所は時計に貼ってあるシールに記載されているケースが多くなりますので、事前に確認が必要です。
デジタル時計の場合は、このリセット作業をしなければ電池交換後に正常に動作しなくなる恐れがありますので、必ず行う必要があります。

中枠を戻して裏蓋を閉める

ここまでの作業が終わりますと、ようやく裏蓋を閉める作業です。
まずは白いカバーの中枠を元に戻し、裏蓋を閉めていきます。
基本的には外したときと逆の工程になりますが、こじあけタイプの裏蓋は指の力で押し込んで閉めていきます。
裏蓋が硬くて指の力では閉められないときは、裏蓋閉め機の出番です。
裏蓋閉め機を使いますと、硬い裏蓋でもしっかりと閉めることが可能となります。

ベルトを戻す

裏蓋を閉め終われば、時計本体の作業は終了です。
最後に金属ベルトの場合は、開いたベルトを元に戻します。
開いたときと逆の手順で、抜いたバネ棒やピンを差し込めば元に戻ります。
ここまでで、基本的な腕時計の電池交換は完了です。

まとめ

腕時計の電池交換は作業工程としてはそこまで複雑なものではなく、一見誰にでもできそうに思えます。
しかし時計内部のデリケートな部分の作業となりますので、決して気軽にできる作業ではありません。
知識や技術のない人が自分で行うと故障の原因にもなり、メーカー保証も受けられなくなります。
時計を本当に大切にしていきたいのであれば、電池交換は時計修理専門店に依頼することをお勧めします。

時計修理をお考えの方は、お気軽にご相談ください