西洋画

西洋画は、油絵、陶板画(とうばんが)、水彩画、パステル画、テンペラ画などの分野に分かれ多くの優れた作品があります。
各分野の西洋画は、それぞれ異なった絵の具などの画材を用いて描かれています。そのため同じ西洋画でも、それぞれに大きく異なった特徴があり、また同じ分野の絵画でも多彩な表現技法で描かれ、違った味わいをもって楽しめます。
分野ごとに骨董価値の高い作品や作家の特徴、歴史などを詳しく紹介します。

骨董価値のある西洋画の特徴

西洋画で骨董価値のある作品の特徴は、まず有名作家の作品であることが第一にあげられます。なお、署名のない有名作家の作品もあります。例えば、家族のために書いた作品、作家の死後アトリエに残されていた作品などがあります。これらは署名がなくても高い価値があります。

また、同じ作家の作品でもカタログレゾネ(美術全集)に収録されている作品は、高い価値が付きます。作家ごとに、人気のある作品やその作品の制作年代によっても価値が変わります。購入後の価値がさらに高くなっていく作品は、例外もありますが一般的には生涯で制作した作品数の少ない作家の作品です。

西洋画とは

西洋画とは、ヨーロッパで発達・普及した画材、技法で描かれた絵画のことで、その違いにより油絵、陶板画、水彩画、パステル画、テンペラ画などの分野に分かれます。西洋画は日本画・東洋画と比較しますと、透視図法による遠近感や光による明暗で平面的ではなく立体的な表現など、より緻密で写実的な特徴があります。

西洋画には「肖像画こそが絵画」という考え方が存在し、時代によってさまざまな意味がこめられた肖像画が数多く描かれています。また、ヨーロッパで美術館に行きますと、キリスト教をテーマにした宗教絵画の展示の多さに圧倒されます。1つはキリスト教を広めるために、数多く描かれたことが理由です。もう1つは字を読めない人、言語の異なる国の人にもキリスト教が理解できるように絵画を場面ごと数多く制作し、絵物語のようにする必要があったことも理由です。

その後、イタリア・ルネッサンス期に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロやラファエロなどの天才によって、西洋画の特徴の1つである遠近法がこの時期に完成します。さらにその後、浮世絵に影響を受けたマネ、モネ、ルノワール、およびセザンヌなどの印象主義の絵画のほか象徴主義、表現主義・フォービスム、及びキュビスムなどのさまざまな手法の絵画が生まれ、現代に脈々と続いています。

西洋画の歴史

1 ルネサンス以前、西洋絵画の源流

西洋画は、古くはフランスやスペインの洞窟の壁に描かれた、ラスコーやアルタミラの洞窟絵画から始まります。やがて、西洋(ヨーロッパ)とは離れた場所で、肥沃な土地のあるメソポタミア、エジプトに文明が起こります。そこでは、メソポタミア美術・エジプト美術が花開き、その影響を受けた西洋絵画は、古代ギリシャの都市国家や都市国家の1つから広大な領土の帝国を作り上げた、ローマ帝国の隆盛とともに発展していきます。しかし、この時代の絵画は作品としてはほとんど残っていません。わずかに火山灰に埋もれたポンペイなど、建築物の壁画として残っているのみです。ローマ帝国時代にはキリスト教がモチーフとなった宗教絵画が、教会の壁に壁画として数多く制作されます。その後、トルコを中心とする東ローマ帝国で栄えたビザンティン美術や、現在のヨーロッパの地域ではロマネスク美術が花開きます。この頃になって、持ち運びができる板に描かれた祭壇画が現れます。

2 ダビンチ、ミケランジェロが活躍したルネサンス絵画

14世紀末から15世紀初頭にかけて、古代ギリシャ・ローマ時代に描かれた絵画のように人間味のある表現を復興するルネサンス運動が、イタリアのフィレンツェで始まります。ルネサンス絵画では油彩画の普及とあいまって、遠近法や陰影法による立体感のある技法で写実的に描かれます。ダビンチやミケランジェロ、ラファエロなどの巨匠が活躍する時代です。

3 バロック、ロココから新古典主義、ロマン主義へ

16世紀に入って、西洋絵画はルネサンス絵画からレンブラント、フェルメールなどの作家による明暗を強調したバロック絵画へと、そしてさらに17世紀から18世紀にかけては繊細で優美な表現が特徴のロココ絵画へ移行していきます。18世紀から19世紀かけては、ロココ絵画への反動から新古典主義が生まれ、同じ頃にはロマン主義も台頭します。ロマン主義の著名な作家としてはドラクロがいます。

4 美術全般に大きな変革をもたらす印象派の出現

そして、19世紀フランスで絵画のみならず、世界の美術史に大きな変革をもたらす印象派が現れます。印象派の画家にはマネ、モネ、ルノアールなどの著名な画家が多くいます。印象派は、従来の絵画が人物中心であったのに対し、自然の風景の中で時間によって変化する光を正確に描写することに大きな特徴があります。陽光や水のきらめきなどの鮮やかさを、絵の具を混ぜずに粗いタッチで描く技法が用いられました。印象派からは、新印象派、ポスト印象派などが印象派をこえる技法を開発して、次の時代の作家に大きな影響を与えます。セザンヌ、ゴッホ、ポール・ゴーギャンなどはポスト印象派の作家です。

5 印象派から20世紀の現代絵画へ

ポスト印象派の対象物を幾何学的に分解して、複数の視点から対象物を描く技法は、ピカソらの作家に大きな影響を与えキュビスムが生まれます。また、ポスト印象派の対象の色彩に捕らわれない自由な表現が、フォービスムや写実性よりも感情の表現に重きを置いた表現主義を生みだします。そのほか、20世紀には、目に見えないものまでもモチーフにする象徴主義の絵画など、多様な絵画様式が生まれます。その後、象徴・表現主義への反動からミニマルアート、ポップアートが生まれ現在に至ります。

有名な西洋画

1 ルネサンス絵画の有名作品

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」「最後の晩餐」。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の「アダムの創造」や「最後の審判」。ラファエロの「アテネの学堂」がルネサンス期の巨匠による有名な作品です。

2 バロック・ロココ絵画の有名作品

バロック絵画の有名作品には、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」「牛乳を注ぐ女」、レンブラントの「ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴」があります。また、ロココ絵画の有名作品には、アントワーヌ・ヴァトーの「シテール島の巡礼」、フランソワ・ブーシェの「水浴のディアナ」などがあります。

3 新古典主義、ロマン主義の有名作品

新古典主義の有名作品には、ジャック=ルイ・ダヴィッドの「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」「ソクラテスの死」や、ドミニク・アングルの「パオロとフランチェスカ」「泉」などがあります。また、ロマン主義の有名作品には、ゴヤの「裸のマハ」「着衣のマハ」、ドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」、ターナーの「雨、蒸気、スピード」などがあります。

4 印象派の有名作品

印象派の作品には、マネ、モネ、ドガ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどの作家が多くの有名作品を残しています。マネの「笛を吹く少年」「草上の昼食」。モネの「睡蓮」「印象、日の出」。ドガの「エトワール(または舞台の踊り子」「舞台の2人の踊り子たち」。ルノワールの「舟遊びの人々の昼食」「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」。セザンヌの「サント・ヴィクトワール山」「りんごとオレンジ」。ゴッホの「ひまわり」「タンギー爺さん」。ゴーギャンの「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」「レ・ミゼラブルの自画像」があります。

5 現代絵画の有名作品

象徴主義の有名作品には、ギュスターヴ・モローの「出現」「オイディプスとスフィンクス」「オルフェウスの首を持つトラキアの娘」や、ロートレックの「ムーラン・ルージュにて」「踊るジャンヌ・アヴリル」などがあります。

フォービスム・表現主義の有名作品には、ムンクの「叫び」「マドンナ」やアンリ・マティスの「ダンス」などがあります。

キュビスムの有名作品には、ピカソの「ゲルニカ」「アヴィニョンの娘たち」「三人の音楽家」などがあります。

ミニマルアート・ポップアートの有名作品には、ウォーホルの「撃たれた青いマリリン」「最後の晩餐」「しまうま」、リキテンスタインの「ヘアリボンの少女」「Look Mickey」、ヘリングの「エイズ撲滅キャンペーンポスター」などがあります。

西洋画の種類

油絵

油絵とは、油絵の具で描かれた絵画のことです。油絵の具は、色が鮮やかで何層にも重ね塗りができ、重厚で深みのある色彩で表現の幅が広いのが特徴です。絵が描かれるキャンバスは、麻か綿の画布が木枠に張られています。数多くの有名作家による骨董価値の高い作品があります。油絵の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

油絵

陶板画(とうばんが)

陶板画は、18世紀にヨーロッパで生まれた技法で、白磁の陶板に絵付けと焼き付けを繰り返して作られ、色がいつまでもあせないという特徴があります。有名な西洋絵画だけでなく日本の有名画家の作品が複製されたり、オリジナルの絵が描かれたりしています。骨董価値の高い陶板画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

陶板画(とうばんが)

水彩画

水彩画とは、水溶性の水彩絵の具で描かれた絵画のことです。水彩絵の具は透明水彩絵の具(ウォーターカラー)と不透明水彩絵の具(ガッシュ)があり、主に透明水彩絵の具が使用されます。水彩画は、ぼかし、にじみなど多彩な技法で透明感のある表現ができます。骨董価値の水彩画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

水彩画

パステル画

パステル画とは、顔料を乾燥させて粉末状にし、それを粘着剤で固めた画材を使って描かれた絵画のことです。パステル画は明るく淡い色調と、きれいなグラデーションを描けるのが特徴です。油絵や水彩画に比べ簡単に描けますので、デッサンを描くときにも利用されます。骨董価値の水彩画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

パステル画

テンペラ画

テンペラ画は、顔料と卵黄を混ぜた絵の具で描かれた絵画のことです。テンペラ画には、イタリアのルネッサンスの時期に描かれた、有名な名画が多数残っています。クリアで明るい色、しっとりとした恒久性のある質感は、油絵や水彩画とは異なった魅力があります。骨董価値の高い陶板画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。