磁気に耐性を持つ耐磁時計と耐磁性

磁気は決して目に見えるものではありませんが、私たちの身の回りにあふれています。
時計は磁気の影響を受けやすく、また時計の不具合原因となることがあります。
ただし、時計の耐磁性は製品により異なりますので、手持ちの時計の耐磁性を確認しておきましょう。
もし自身の環境に耐磁性能が必要と感じる場合には、耐磁時計の利用を検討してみると良いでしょう。

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耐磁性とは

耐磁性は、時計がどの程度磁気に耐えられるかを示すものです。
耐磁性はJISの規格で複数の基準が設けられており、非耐磁・第1種耐磁・第2種耐磁に分類されます。

非耐磁時計

1600A/m(アンペア/メーター)まで耐えられるとされ、必要最低限満たさなければいけない基準です。

第1種耐磁

4800A/mで、5cmまで近づけても性能を維持可能なレベルとなっています。

第2種耐磁

基準は16000A/mとなっており、1cmまで近づけても大抵の場合は性能を維持できるレベルです。

磁気から守る素材を使用

耐磁時計は、時計本体を特殊な素材・構造を用いて保護しています。

主に軟鉄と呼ばれる素材を用いており、磁気を遮断せず、一度内部へと取り込み、外へと逃しています。軟鉄でムーブメントを囲い、磁力線を制御しているのです。

磁化しやすい通常の鉄(硬磁性体)とは異なり、軟鉄が磁気を失うと元に戻る性質を応用しています。

耐磁時計について

耐磁時計とは、磁気への耐性を強化し、かつ第1種あるいは第2種の耐磁性能を満たしている時計を指します。
カタログや時計本体の裏蓋に記載されており、磁石のマークが描かれています。
古い時計の多くは非耐磁時計ですが、製品に耐磁マークが刻印されている場合、ある程度の磁気に耐えられるよう設計されています。

仮に磁気を発する製品へ近づけても影響を受けにくく、時計の精度を保つことができることが大きな特徴です。
特に耐磁性の高いモデルであれば、影響は最小限に抑えられます。

世界初の耐磁時計

世界で初めての耐磁時計は1853年に設立されたブランド、TISSOT(ティソ)が開発しました。

1930年に誕生した、ティソ アンチマグネティークです。
以後はさまざまなブランドが開発に乗り出し、高耐磁性能が特徴の時計も生み出されています。

78,000A/mが特徴の「IWC マーク11」

70年代に発売された「IWCマーク11」というモデルは、ムーブメントを軟鉄で覆い、テストでは78,000A/mと、第2耐磁以上の耐磁性能を持っていました。

イギリス空軍で電磁波に強い時計を求める声が強まったことから、スイスの時計メーカーIWCとジャガー・ルクルトが共同開発に乗り出し、1948年に誕生しました。

第2耐磁の規格が16000A/mですから、磁気に4倍以上耐えられる計算です。

ロレックスの高耐磁時計

他にも、高級ブランドが開発した高い耐磁性能誇るモデルが存在します。
例えば、ロレックスのミルガウスです。

モデル名の“ミル”はフランス語で1000ガウスを指し、80000A/mに耐えられる構造になっています。
1980年代末期に生産終了されましたが、2007年に復刻されています。
インナーケースに軟鉄素材を使用しており、エクスプローラーがベースになっています。

耐磁時計も完全に磁気を防げるわけではない

しかし、耐磁時計でも磁気を完全にシャットアウトできるとは限りません。

電化製品製品によって発する磁気の強さは異なるため、耐磁性能を超えた磁気の影響を受けますと、時計本体が磁気を帯びてしまうおそれがあります。

日常生活に必要な性能を満たすことが耐磁時計の目的であるため、仮に直接磁石へ近づけた場合などは時刻が遅れたり、進んだりする症状が出る可能性も高くなります。

時計修理をお考えの方は、お気軽にご相談ください