日本画・東洋画

日本画・東洋画は、掛け軸、浮世絵、水墨画、仏教絵画、書画などの分野に分かれ、数多くの優れた作品が日本や東洋独自の絵の具、墨、和紙、絹などを使って、分野ごとに特徴のある表現技法で描かれています。

日本画・東洋画には、西洋画にない筆の「かすれ」や「にじみ」などの表現、また独特の色調などがあり、日本人や東洋人の感性に強く響いてきます。
分野ごとに骨董価値の高い作品や作家の特徴、歴史などを詳しく紹介します。

骨董価値のある日本画・東洋画の特徴

日本画・東洋画で骨董価値のある作品の特徴は、海外でも人気のある浮世絵、和室に飾ってよく似合う掛け軸の水墨画など、作家や作品の価値に加えて人気があることです。
そのほかでは西洋画の中でも、特に油絵の具を使った重々しさのない清涼感のある花鳥風月を描いた風景画や、美人画なども人気が高く、骨董価値の高い作品が多くあります。

作家別では、たくさんの有名作家がいるので限定するのが難しいですが、特に谷 文晁(たに ぶんちょう)、円山 応挙(まるやま おうきょ)、狩野 探幽(かのう たんゆう)、伊東 深水(いとう しんすい)、横山 大観(よこやま たいかん)などの作品に高い骨董価値が目立ちます。

また、浮世絵の場合は、初版刷りの最初の200枚までは、その後に刷られたものよりも原版がすり減っていない状態のときに刷られているため、骨董価値も高くなっています。

日本画・東洋画とは

日本画とは、日本独自の岩絵の具や和紙、絹など西洋画とは異なる画材料を使い、日本の伝統的な表現技法を用いて描かれた絵画のことです。

代表的な日本画として、平安時代の頃に源氏物語などの絵巻物に描かれた大和絵があります。
また、寺院や城郭などの襖(ふすま)や屏風(びょうぶ)、壁などの金箔地に狩野派や琳派などの画家によって鮮やかな濃彩色で描かれた絵画もその一つです。
さらに、江戸時代には大衆文化として多くの庶民が保有し、鑑賞して楽しんだ浮世絵などがあります。

浮世絵の写実を追わない大胆な構図、陰影のない平面的な空間の表現、鮮やかな色使いなど西洋画にない表現技法は、ヨーロッパの有名画家であるマネ、ロートレック、ドガ、ルノワール、モネ、ゴッホ、ゴーギャンなどに多大な影響を与えました。

東洋画とは、狭義の意味としては、主に中国で書(漢詩)と絵画が一体となった書画で、題材別に山水画や、仏教絵画、花鳥画、人物画などのことです。

なお、山水画はその後、墨一色で「かすれ」や「にじみ」「ぼかし」などの技法で描かれる水墨画として、また水墨画は単なる風景画ではなく当時の中国人の人生観、理想を表すものとして隆盛を極めていきます。
東洋画は、広義には東洋の国々で西洋画にはない画材料、表現方法で描かれた絵画のことです。

東洋画・日本画の歴史

日本独自の特徴を持った絵画は、平安時代の大和絵から始まります。当時の絵画は、中国の唐絵(水墨画)の影響を受けていました。
しかし、平安時代の中期から後期にかけて、中国の文化に影響されない日本の風土や生活にあった文化が形成されていき、そのなかから日本独自の特徴を持った大和絵が発展していきます。
大和絵では、日本固有の四季の風景、当時の人々の生活などのほか、物語や和歌、あるいは仏教をテーマに描かれました。

その後、平安時代の後期から鎌倉時代にかけて、墨のみで描く「白描(はくびょう)」と呼ばれる大和絵も現れます。
鎌倉時代になりますと、仏教や高僧をテーマにした絵画や平安時代と同じく絵巻物が数多く描かれます。

室町時代になりますと、この時代に禅宗が幕府の保護を受け武家社会に広まります。それに伴い、水墨画が流行します。
水墨画は、墨一色で描かれますが、白描とは異なり墨の濃淡やにじみ、かすれを使う技法で描かれました。主に山水や花鳥が描かれたことから山水画、花鳥画とも呼ばれます。
この頃に中国の水墨画の模倣ではなく、日本独自の技法・表現が完成していきます。また、大和絵と水墨画が融合した絵画も描かれます。

安土桃山時代になりますと、室町時代の中期頃から活躍しはじめた画家(作家)集団の狩野派や桃山時代後期から活躍する琳派などが、寺院や城郭などの襖、屏風、壁などの金箔地に雄大な構図で豪華な絵画を数多く描きます。

江戸時代になりますと、狩野派や琳派以外にも、丸山 応挙、渡辺 崋山(わたなべ かざん)、谷 文晁など多彩な画風の作家が数多く現れます。
また、多色刷りの版画で印刷され安く手に入ることから、多くの庶民も楽しんだ「美人画」「役者絵」「名所絵」などの浮世絵が生まれます。
さらに、この頃になりますと、今までの日本画にはなかった遠近法や明暗法の技法で描く作家も現れはじめます。

明治時代以降も、それまでの伝統的な日本画の表現技法や画材料を使って描かれ続けます。
狭義の意味の日本画は、明治時代以降に西洋画(油彩画)と区別して描かれた日本画のことのみを指します。

一方、日本に大きな影響を与えた東洋画の水墨画は8世紀、唐の時代の中ごろ以降に広く描かれるようになります。
中国では、「書(漢詩)」と「絵画」とは切り離せないものという考えがあり、多くの作品には書と絵画が一体になって描かれています。
中国の水墨画は、日本のみならず周辺の東洋の国々に大きな影響を与えます。
唐の後の宋時代には、花鳥、山水、人物などを華麗な色彩で描く絵画も現れ、現代に至っています。

有名な日本画・東洋画

有名な日本画

飛鳥・奈良時代の絵画としては、骨董品としては流通しない法隆寺金堂壁画や高松塚(たかまつづか)古墳壁画、キトラ古墳壁画などが有名です。

その後、平安時代になり日本独自の特徴の持った絵画は、平安時代の絵巻物に描かれた大和絵です。
有名な作品として、王朝生活や説話(おとぎ話)を題材にした源氏物語や枕草子、伊勢物語などがあります。

鎌倉時代にも絵巻物は盛んに描かれ、この時代の有名な作品は、鳥獣人物戯画や平治物語絵巻などです。

室町時代には水墨画が盛んになり、雪舟(せっしゅう)の「秋冬山水図」は代表的な作品です。

桃山時代は歴史的な期間は短いですが、優れた絵画作品がたくさん生まれます。
狩野派の狩野 永徳(かのう えいとく)の「唐獅子図屏風」、狩野 山楽(かのう さんらく)の「牡丹図」、長谷川 等伯(はせがわ とうはく)の「松林図屏風」などが有名です。

江戸時代には、狩野派や琳派、大和絵の流れをくむ土佐派や琳派、そして水墨画の流れをくむ狩野派などの画家による有名作品が数多く描かれます。
土佐派の土佐 光起(とさ みつおき)の「三十六歌仙図屏風」、琳派の俵屋 宗達(たわらや そうたつ)の「風神雷神図屏風」、そして、狩野派の狩野 探幽(かのう たんゆう)の「松鷹図」などがあります。
それ以外の優れた画家による有名作品としては、谷文晁の「公余探勝図」、渡辺崋山の「一掃百態図」、円山応挙の「雪松図屏風」、伊藤 若冲(いとう じゃくちゅう)の「日出鳳凰図」などがあります。

そして、世界の画家に影響を与えた浮世絵がこの時代に生まれましたが、多数の有名作品があります。
葛飾 北斎(かつしか ほくさい)の「富嶽三十六景」、歌川(安藤)広重の「東海道五十三次」、喜多川 歌麿(きたがわ うたまろ)の「ビードロを吹く女」、東洲斎 写楽(とうしゅうさい しゃらく)の「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛(役者絵)」、菱川 師宣(ひしかわ もろのぶ)の「見返り美人図」などは、学生時代に教科書などで目にされたこともあるのではないでしょうか。

明治時代以降になりますと、橋本 雅邦(はしもと がほう)の「竜虎図」、富岡 鉄斎(とみおか てっさい)の「阿倍仲麻呂明州望月図」、横山 大観(よこやま たいかん)「雨霽る(はる)」、下村 観山(しもむら かんざん)の「弱法師」、菱田 春草(ひしだ しゅんそう)の「落葉」、上村 松園(うえむら しょうえん)の「序の舞」、東山 魁夷(ひがしやま かいい)の「緑響く」、川合 玉堂(かわい ぎょくどう)の「行く春」伊東 深水(いとう しんすい)の「指」、竹久 夢二(たけひさ ゆめじ)の「黒船屋」などの作品が有名です。

有名な東洋画

東洋画で有名なものは中国の作家による水墨画が中心となりますが、彩色された絵画も数多く描かれています。なお、有名作品でなくても古い仏画では、保存状態が悪くても希少性があると高い骨董価値がつくことがあります。

主に有名な水墨画及びそのほかの絵画としては、宋時代の郭熙(かくき)の「早春図」、夏珪(かけい)の「渓山清遠図」、蘇漢臣(そかんしん)の「秋庭戯嬰図」、元時代の趙孟?(ちょうもうふ)の秀石疎林図」、黄 公望(こう こうぼう)の「富春山居図」、呉鎮(ごちん)の「蘆灘釣艇図巻」、趙孟?の「二胡羊図」、明時代の徐渭(じょい)の「葡萄図」、仇英(きゅうえい)の「漢宮春暁図、呂紀(りょき)の「杏花孔雀図」、清時代の惲 寿平(うん じゅへい)の「出水芙蓉図」などがあります。

日本画・東洋画の種類

掛け軸

掛け軸とは、書や絵画を紙や布で裏打ち・縁取りをして、鑑賞や保存がしやすいように仕立てたものです。保存は軸を中心に丸めて保存できます。
絵画や書画を和室に飾るときに適しており、絵画の骨董品として人気があります。有名作家の掛け軸には高い骨董価値があります。
掛け軸の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

掛け軸

浮世絵

浮世絵は、16世紀後半に京都で始まり18世紀の江戸時代に大きく花開いた日本独特の表現、技法が用いられた絵画のことです。
浮世絵には、肉筆で描かれた浮世絵と木版画で刷られた浮世絵があります。版画の浮世絵は、初版のものには高い骨董価値がついています。
浮世絵の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

浮世絵

水墨画

水墨画とは、多色で描かれた作品も一部にありますが、一般的には墨の濃淡のみで描かれた絵画のことです。墨絵とも言います。
墨の線だけで描くのではなく、濃淡をつけて、さらにぼかすなど多彩な技法で描かれており、美術的価値、骨董的価値の高い作品が多数あります。
水墨画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

水墨画

仏教絵画

仏教絵画とは、仏教を題材にして描かれた絵画のことです。単に仏画とも呼ばれ骨董価値の高い作品があります。
仏教絵画は日本、中国、朝鮮、インド、チベット、その他東南アジア諸国で、寺院の石や土、板の壁に描かれた壁画から、絹、紙、板に描かれた絵画まであります。
仏教絵画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。

書画

書画とは、本来の意味は書と絵画を総称する用語です。そのため書だけの作品も書画と言います。
しかし、鑑賞者や作家自身が賛辞や絵画に関することを毛筆で書き加えることで書と絵画が一体化。1つの芸術作品となったものも書画と言い、骨董価値の高い作品が多数あります。
書画の作品や作家、歴史などを詳しく紹介します。