時計のオーバーホールが不要な場合はある?

時計のオーバーホールにはある程度の料金と期間がかかるため、メーカーや時計修理店などへの依頼を悩まれる方も多いでしょう。しかし、オーバーホールを行わないと、大切な時計の寿命が短くなるおそれもあります。

一方、費用との兼ね合いから、オーバーホール不要で時計を使う選択肢もないとは言えません。こちらでは、時計のオーバーホールの必要性について解説します。

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オーバーホールが不要な時計は存在しない?

原則として、時計を末永く愛用したいのであれば、オーバーホールは必要です。理由はいくつか挙げられます。

まずは消耗品の劣化です。時計の中には防水性に関わる「ゴムパッキン」が取り付けられていますが、経年によって劣化をすると固くなり機能しなくなります。

さらに、ゴミやほこり、湿気などが時計の内部へと侵入する可能性も。
とくに湿気は動作不良や錆びを引き起こす原因にもなり得ます。最悪の場合、針の進みが遅くなったり、動かなくなったりするケースもあるでしょう。

さらに、長期間オーバーホールやメンテナンスを行わなかった場合は、油の劣化や固着といった「油切れ」による不具合の発生も問題です。潤滑油の劣化は歯車の摩耗を大きくする原因になり得ます。
結果、油切れが原因で歯車が歪んでしまい、各所の部品にダメージが加わる可能性も。修理が必要になれば、オーバーホール以上のコストがかかってしまいます。

このように、オーバーホールは時計を故障から守り、寿命を延ばすことに貢献してくれるお手入れ方法です。特に機械式の腕時計などは、メーカー推奨の頻度でオーバーホールを行うことをおすすめします。

何故「オーバーホールは不要」という人がいるの?

悩む
どの時計であっても、長く使うのであればオーバーホールは必要です。しかし、「オーバーホールは不要」という考えを持つ方も一定数いらっしゃいます。

そのもっともな理由として挙げられるのが「買い換えたほうが安いから」です。たとえば、ロレックスやオメガなどの高級時計をメーカーへオーバーホールに出した場合には、少なくとも5万円前後の費用がかかります。4年周期でオーバーホールを実施したとすると、20年で20万円の支出です。

一方、数万円程度の時計であっても、オーバーホールにはある程度の金額が必要です。場合によっては2万円程度の請求が来ることもあるため、それならオーバーホールをせず、安価な時計を新たに購入したほうが安上がりです。

そのほか、オーバーホールの頻度が少ない時計を購入し、メンテナンスだけを行うという方法も考えられます。以下から、オーバーホール周期が長い時計の種類をご紹介します。

クオーツ式時計

時計は機能が増えるほど、故障の原因も増えます。たとえばストップウォッチ(クロノグラフ)やカレンダーが内蔵されると、それだけムーブメントを構成している部品の数は増え、不具合を引き起こす可能性も高まります。また、難易度が上がることからオーバーホールを行う際の費用も高額になりがちです。

使用されている油の状態にもよりますが、ゼンマイを動力源とする機械式時計とは違い、電池で動く電子回路部品を用いられるクオーツ式の時計は、歯車にかかる負荷が少ない為、オーバーホールの頻度を低く抑えられます。

デジタル時計はオーバーホールが出来ない為、ムーブ交換が必須になります。歯車を使用していないので故障の割合も少なく、安価なものが多いのである程度の期間使えればよい、という方にはおすすめの選択肢です。

ソーラー・電波時計

ソーラー腕時計は、電池交換不要で使い続けられるタイプの時計です。そのため、寿命は長くオーバーホールの頻度も少なくて済みます。ただし、内部の二次電池は放電・充電を繰り返すことでいつかは劣化します。すると、すぐにバッテリー切れを起こして使い物にならなくなることも。モデルにもよりますが、たいていは10年程度で電池が寿命を迎えます。

10年使えれば十分ということであれば、そのまま買い換えるのもよいでしょう。また、メーカーに依頼し二次電池を交換することもできます。

スマートウォッチ

スマートウォッチは従来とまったく異なる構造の時計です。イメージとしては、小型のスマートフォンが時計型をしているようなもの。そのため、オーバーホールは一切不要になります。ただし、内部のバッテリーがへたってくると、充電が保たなくなります。その場合はメーカーにバッテリー交換を依頼する必要があります。

時計のオーバーホールとは?

ムーブメント
前述のとおり、長く愛用したい時計がある場合は、オーバーホールをおすすめします。
そこでここからは、オーバーホールの基礎知識についても見ていきましょう。

そもそもオーバーホールとは、時計内部にあるムーブメントをパーツごとに分解した上で洗浄。同時に、摩耗したパーツを交換したり油を注いだりします。併せて精度の調整を行い、元通りに組み立てるのが一通りの作業内容です。

この作業は自動車の車検によく似ています。自動車の場合にも、オイル交換などのメンテナンスが行われます。整備を怠ればブレーキがうまく効かなくなったり、燃費が悪くなったりしてしまいます。その意味で、オーバーホールは時計の整備点検とも言えるでしょう。

オーバーホールの頻度は?

オーバーホールの頻度は、取扱説明書に書かれている期間が基本となります。
そのためモデルによって違いがありますが、一般的には機械式時計で3~4年、クオーツ式時計で4年程度です。

ただし、使用頻度が高い場合には磁気の影響や外出時の寒暖差など、劣化を促す要素が増えます。そのほか、手汗や雨などの影響も考えられるでしょう。この場合、オーバーホールの期間は短くなる可能性が高いです。

また、しばらく使わないでしまっておいた時計の場合でも、オーバーホールは必要です。これは、放置によって潤滑油が劣化し凝固している可能性があるからです。また、クオーツ式の場合であっても電池の液漏れといったケースが考えられます。

オーバーホールの値段は?

オーバーホールは基本的にメーカーへ依頼しておくと安心です。ただし、メーカー以外の修理工房や時計店だと対応できない、というわけではありません。修理技師の技量次第では、そのほうが安上がりになる可能性もあります。上記を踏まえた上で、オーバーホールにかかる料金を見てみましょう。

国産のクオーツ時計の場合、少なくとも1万円程度の費用がかかります。機械時計や機構が複雑なクロノグラフの場合は、3万円以上の金額がかかるケースも。また、海外有名ブランドや高級時計の場合は、5万円以上と想定されます。

オーバーホールとメンテナンスの違い

オーバーホール同様、時計の整備で行われる作業としてメンテナンスがあります。ただし、この2つは内容が異なるので注意が必要です。

メンテナンスは「維持」や「管理」といった意味を持つ言葉です。時計の場合には、正常な動作のための日常的なお手入れに該当します。たとえば電池交換や不良箇所の調整・修理がメンテナンスです。期間は短く、費用も安価になります。

一方、オーバーホールは徹底的な点検整備です。ある意味、新品に近い状態にまで復元を行う作業となりますから、メンテナンスとは意味合いが大きく異なります。その分、期間は長くなり、料金も高価となります。

故障やオーバーホールに悩んだら、お店に相談してみましょう

お気に入りの時計を長く使っていきたいなら、時計修理の専門店やメーカーに修理対応を依頼するのがオススメです。ただ、並行輸入品など時計のブランドによっては、メーカーが修理を拒否している場合や、代金が割高になる場合もあります。

また、高級なブランド時計は特に取り扱いが難しく、間違った扱い方をすると壊れてしまう恐れがあります。
時計は精密機器ですので愛用の時計に思わぬトラブルが起きないよう、修理実績が多い時計知識が豊富な修理専門店に相談や依頼をしましょう。

時計修理をお考えの方は、お気軽にご相談ください