骨董価値のある絵画

絵画のなかで骨董価値がある作品は、有名作家の偽物でない作品、歴史が古く希少性のある作品など、よく知られている条件のほかにもたくさんの条件があります。
骨董価値を見極めるためには、これらの条件について知っておかねばなりません。

絵画は、日本画・東洋画、西洋画、版画などに分かれ、さらに掛け軸、浮世絵、水墨画、油絵、水彩画、版画など多岐にわたります。
これらの絵画に共通する一般的な条件について解説します。

骨董価値のある絵画を見極めるために、必要な条件について

骨董価値のある絵画は、例外もありますが一般的には以下の条件を満たしています。
なお、絵画の種類や分野によっては該当しない条件もあります。

1.有名な作家、人気の作品、古い作品であること

有名・人気のある作家の作品は絵画に限らず、高い骨董価値があります。
また、同じ作家でも描かれているテーマによって、価値が上がる作品があります。
また、古ければ古いほど価値が上がります。

ただし、海外の絵画であれば16世紀以前、日本の絵画であれば桃山時代(16世紀)以前の作品になります。17世紀、日本で言えば江戸時代以降の作品は、作家による価値になります。

2.贋作(がんさく)でなく真作(しんさく)であること

有名作家の真作(本物)であるかどうかは、絵の出来(質の高さ)、作品の署名、落款(らっかん)で判断されます。
贋作(偽物)目的で描かれた絵画は、署名や落款が本物に似せてあり、簡単には判別できないものがあるので注意が必要です。
また、印刷された絵画は、絵のレベルや署名・落款が本物と同じになるため、間違えるケースも多くあり注意が必要です。念入りに作られた贋作は、表面に色が塗られ写真のようにつるつるとしておらず、触っただけではわからないほど精巧に作られています。
なお、絵の質の高さ、署名、落款が本物とそっくりでも、使用されている絵の具などの画材料の違いで判別できます。

3.絵画の状態が良いこと

虫食い、しみなどの汚れ、傷、破損などがないこと、それらがあっても修復が可能なことが骨董価値の高くなる条件です。
なお、なかには長い歴史を証明するような汚れや傷が、かえって高い価値を生みだしていることもあります。

また、絵画の状態が極端に悪くて復元ができなくても、それを上回る希少性があれば価値が大きく下がらないこともあります。古くてボロボロだから価値がないとは、必ずしも言えません。

なお、ホコリや汚れがあるとはらったり、落としたりしますと、より価値があると思いがちですが、かなりの年代物と思われる場合は、そのままの状態で骨董価値を査定してもらったほうが、時代を判断する証となる骨董価値が高くなることがあります。

また、価値を下げないためには、直射日光の当たる場所や風通しのよくない場所、湿気のある場所での保管を避けます。
できるだけ換気を行い、吸湿剤をいれて保管するようにすると骨董価値を高く維持できます。

4.量産品ではなく希少品であること

歴史的に極めて希少性があること、量産されたものではなく、1点1点丁寧に描かれた作品であると骨董価値が高くなります。同じデッサン画でも、同じ構図の練習で多数描かれたものは価値が劣ります。

また、友人、知人などに贈呈するため、短時間で書き上げられた作品なども価値が劣ります。
浮世絵のような肉筆画と版画の両方がある場合、1点だけしかない肉筆画と多数印刷された版画では骨董価値が変わります。
版画の場合、印刷するごとに原版が摩耗していくので印刷が初版であるか、そうでないかで大きく価値が変わります。

5.修復は、素人ではなく専門家によって「修理」または「復元」が行われていること

オリジナルのままの絵画がベストですが、修復が行われている場合、専門家と素人が行った修復では、まったく価値が異なります。
素人が行った修復は元の状態を無視した、価値を上げるどころか下げた「修理」となり大きく下落します。

一方、専門家が行った修復は、元の状態の価値を損なわずに「修理」「復元」が行われますので、一般的には価値は大きく下がりません。

6.多くの人が好む人気のテーマ、作家が得意とするテーマの絵画であること

多くの人が好むテーマや作家の得意なテーマの絵画は、価値が一段と上がります。
また、予測することは難しいですが、時代、時代によって好まれる作家、テーマ、画風が変わります。
絵画としての美術的な価値は不変でも、骨董品として取り引きされるときには価格的な価値は大きく変わることがあります。

7.鑑定証があること

すべての有名作家について、信頼できる鑑定証が発行されているわけでありませんが、正式な鑑定証があればその絵画は、本物であることが証明されます。
ただし、鑑定証の偽造も堂々と行われていますので、鑑定証=真作(本物)とすぐに判断するのは危険です。

また、逆に有名作家なのに鑑定証がないから価値がないと判断するのも、また間違いです。その理由は、鑑定証はその絵画が真作(本物)であることが証明されるだけで、骨董価値があることが証明されるわけではないからです。

なお、有名テレビ番組の影響で「鑑定」=「価値の査定」として使われていますが、「鑑定」の本当の意味は、真贋を証明することです。
骨董価値を見極めて、価値がどの程度あるかを判定するのは「査定」です。

8.箱書きのある箱に入っていること

鑑定証は別に、作家本人や鑑定人が作品の「題名」などを書き込み、署名・押印された箱書きのある箱に入っていることがあります。
箱書きもまた、それが本物であれば、真作(本物)であることが保証されます。
一方で、鑑定証と同様に偽装されていることがあります。

鑑定証も箱書きも本物であれば、本物かどうか疑わしい作品よりも価値は高いと言えます。
しかし、信頼できる店舗であれば、鑑定証や箱書きの有無にかかわらず、作品の真の骨董価値を査定(鑑定)してもらえます。

9.1つのテーマで描かれた複数の作品がある場合に、すべてがそろうこと

1つの特定のテーマに沿って、複数の絵画が描かれることがあります。その絵画の全種類をそろえられますと、1点ごとの合計価格よりも付加価値が付いて高額になります。