久野 和洋(くの かずひろ)

フランス留学とジョットとの出会い

久野 和洋は、1938年に愛知県で生まれた日本の洋画家です。昭和~平成時代にかけて活躍しています。
小さい頃は両親のけんかが絶えず、それが嫌でスケッチブックを持って外へ出掛けることが多かったそうです。

本格的に画家を志したのは20歳の頃であり、上京して1961年に武蔵野美術学校第二本科西洋画科に入学します。さらに立体研究を志し、本科美術科彫刻専攻に編入しています。
1967年に第10回安井賞展に出品をしたり、1970年に個展を開催したりと、盛んに活動を始めました。

1973年からは招待研究生としてエコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)に留学しました。
ルーブル美術館でジョット・ディ・ボンドーネの絵画に出会い、感銘を受けます。1年間ほどのテンペラ技法による模写経験が、久野の画家としての生き方を決定づけました。

身近な風景を描き続けた

久野和洋にとってパリ留学は、文化庁の在外研修員の時期を含め、作品の表現の源となりました。
1976年に帰国し、1982年に須田 寿(すだ ひさし)の推薦で第34回立軌展に招待出品します。
ほかにも、同人推挙され、以後毎回出品していました。
また、1977年に武蔵野美術大学に教員として着任以降、教べんをとり後進の育成に尽力しています。

久野の作品の多くは何気ない日常の見慣れた風景であり、自宅近くの地面や風景に目を向け、『水溜まる』や『地の風景』などの写実的な世界観を描きます。

そして1991年に文化庁芸術家在外研修員として、イタリア・フィレンツェに滞在。
「両洋の眼展」にエトルリアの大地で取材した『古代の地(VI)』を出品し、推奨を獲得します。
以後は同展に毎回出品し、1999年に『地の風景・坂の道』で河北倫明賞を受けるなど、日本の具象絵画領域における代表的作家の一人として、美術界の発展に貢献をしています。

その後2008年に、代表作による「退任記念 地からのメッセージ・静かなる世界 久野和洋1963-2008」を開催。
2009年には練馬区立美術館で「特集展示 久野和洋 ―地の風景―展」を開催しました。