希少価値の高い翡翠(ひすい)に彫刻が施された置物は、資産価値が高い
翡翠は希少価値ある宝石ですが、さらに芸術性に高い彫刻を加えることで高い価値を生み出しています。
世界最高峰の翡翠彫刻「翠玉白菜」を知ることで、素材(翡翠鉱石)と芸術性(彫刻)が相乗価値を数段高めてくれることを理解できます。
価値ある翡翠骨董とは、素材をいかした芸術的価値観と市場の需要が相まって生み出してくれるものということが分かります。
希少価値の高い翡翠に施された彫刻とは
翡翠とは
翡翠の名称
翡翠と呼ばれるようになった由来については諸説ありますが、そのなかで有力なのはカワセミ(鳥類)から付けたという説です。
むかし中国では翡翠のことを「玉(ぎょく)」と呼び、数ある宝石のなかのひとつとして扱われる存在でした。
あるとき美しい神秘の輝きを放つ「緑色と緋色が混じる玉」に目が留まり、まるで川面を飛ぶカワセミ(中国名 翡翠)の羽根のようだと気に入り、カワセミの名をとって「翡翠玉(ひすいぎょく)」と呼ぶようになります。そこから翡翠の総称が生まれたといわれています。
一方で日本はといいますと、なんと縄文時代から国産翡翠を採掘しています。5000年以上前の遺跡からアクセサリーなどが出土していて、彫刻などの高い加工技術を持っていたことが分かります。
ところが弥生時代になると国内採掘をやめてしまい、大陸から輸入することになります。
弥生時代から昭和を迎えるまで国産採掘は途絶え、永きにわたり輸入鉱石・輸入美術品として翡翠彫刻は重宝されていきます。
ちなみに日本では「玉(たま)」と呼ばれていて、「翡翠」を使うようになったのはごく最近になってからのことです。
翡翠の硬度
鉱物としての翡翠は、「硬玉(ジェイド)」と「軟玉(ネフライト)」に分かれます。
硬質の翡翠はヒスイ輝石、軟質の翡翠が透閃石(とうせんせき)に分類されていて、鉱物としては全く違うものだったことが分かっています。
どちらの翡翠も「翡翠」として流通しているのですが、「本翡翠」といわれ希少価値のある宝石とされているのは硬質翡翠のことです。
実際に2つを見比べても違いは分からないほどですが、「硬質翡翠は本物・軟質翡翠は偽物」といわれるほど資産価値に違いはあります。
また彫刻技術から考えますと、硬い石に彫刻するためには相応の技術が必要になることから、硬質翡翠に彫刻された作品は付加価値が増して一層高い評価を受けています。
翡翠の色
一般的に「緑色の宝石」のイメージが強い翡翠ですが、実際にはたくさんの色を持っています。ざっと透明(無色)色から黒色まで15色、細部に見分けると無数の色があります。
実は純粋な翡翠は無色です。地下で生成されたときは透明な結晶体で、それがまとまって石化することで白色に見えます。そしてここに不純物が混じることで、着色されるわけです。
カラフルな色合いはとてもきれいですが、彫刻などの芸術品で好まれるのは「美しく透き通った緑色」の翡翠です。
この鮮やかな緑色は、メッキなどでおなじみのクロム(Cr)が混じったことが原因で、また深い緑色になるのはサプリでおなじみのヘム鉄、つまり二価鉄(Fe2+)が混じったことによるものです。
きれいな色は翡翠の資産価値を判断する上で、とても重要です。日本では比較的濃い色合いが人気ですし、反対に東南アジアを中心とした海外では薄い色合いが好まれています。
もっとも世界共通で人気があるのは、青竹のような美しい緑色の「ろうかん色」、それとチタン(Ti)が混じって青みがかった緑色になった翡翠が最高級といわれています。
一方で酸化鉄の影響を受けた黄、橙、赤橙色の翡翠や、炭素が混じった真黒な翡翠などは、とてもきれいですが残念ながら資産価値としては、低く評価されています。
彫刻技術が優れている翡翠の価値
日常的な翡翠彫刻
翡翠は神秘的な色合いから「神々しい宝石」として、宗教祭祀に使われています。数珠などの玉彫工芸品は信仰のための所作に使われ、彫刻を施した仏像や玉は信仰のよりどころとしてあがめられています。
ほかにも日常的に使われているブローチや勾玉(まがたま)はアクセサリーとして、守り神的な意味を持つ亀や龍などが彫刻されたパワーストーンは、肌身離さず持ち歩く宝石として高い人気があります。
また身近な置物としては、盾やトロフィーの一部に彫刻された翡翠が使われていますし、灰皿や卓上ライターなどにも使われています。
彫刻技術が優れている翡翠の価値
高価な原石に高い技術が加わると価値は増大します。その代表的な例が世界的に有名な故宮博物館の所蔵品「翠玉白菜」です。もちろん故宮の白菜は、「世界にひとつだけ」の逸品なので価値を算出することはありませんが、それをオマージュした作品でも高い評価を受けています。それほどまでに翡翠石の良さを引き出す彫刻技術が融合した作品だったわけです。
一方で、古代中国の祭祀に使われた玉器(ぎょくき)の琮(ソウ)は、置物として好まれています。
琮は底がない花瓶のようなものですので、置物として飾る以外にはないものです。でも骨董としては、宝石としての価値観を上回るモデルとして価値の高い置物といえます。
翡翠彫刻-仏像と宗教的な置物
古来より「神秘の力を持つ」と信じられていた翡翠。霊力が宿ると信じられ、細かい彫刻を施し副葬物として棺に納められた歴史もあります。
また、玉彫工芸の高い技術よって丸い玉に削られた翡翠玉(ヒスイギョク)は、置物の役割だけではなく信仰のなかでも一定の役割を担ってきました。
資産価値の高い翡翠鉱石に洗練された彫刻を施すことで、学術的・芸術的な付加価値が生まれ、翡翠本来の価値以上に高い評価を受けることができます。
ちなみに翡翠が持つ独特な輝きは、原石の表面を磨くことでさらに輝きを増し、その磨かれた翡翠の色合いを考慮してデザインされた彫刻は、自然と技術が融合した美しい仏像となっていきます。
希少価値の高い翡翠に施された彫刻と、その歴史について
翡翠の歴史
翡翠は古来より世界中で珍重された鉱石です。高貴な力を持つ石として、時には金(ゴールド)よりも上位にランクされた価値ある宝石です。
アジア大陸を中心に広まった仏教文化圏、中央アメリカで栄華を極めたインカ帝国、時代や文化が違えども大事にされてきた宝石が翡翠だったわけです。
翡翠彫刻の歴史概略
強い神秘性を持っていた翡翠は、単なるきれいな宝石としてだけではなく、信仰の対象やそれを補助する役割を担ってきました。当初は権力に近い者たちのパワーストーンとして、もしくは権勢の誇示に利用された側面もあります。
徐々に庶民にも手が届く“希少価値の高い”鉱石として広まり、今では磨きをかけた美しい石に、高い技巧の彫刻を施して形作られた不思議な力が宿る美術品として、多くの人から愛される宝石となっています。
翡翠彫刻 中央アメリカでの歴史
アメリカ大陸のなかで高い文化を持っていたといわれるインカ・マヤ文明が栄えた当時、王族や王に仕えた高位の人々が亡くなりますと、緑色の翡翠で仮面を作り被せてから埋葬しています。
彼らにとって緑色とは「生命の象徴」という特別な色だったこともあり、翡翠の面は黄泉(よみ)の世界で謳歌(おうか)できるよう望みが託されたものだったのです。
黄泉の世界において、「永遠(とわ)の生命(いのち)」を与えてくれる緑色。緑の輝きを放つ鉱石「翡翠」は、その考えに合致したものでした。
そして何よりも大事なことは、希少価値の翡翠に彫刻を施して棺に納めるということは、王朝の権勢と財力を表し、弔うことで国の安寧(あんねい)が望めるものだったのです。
翡翠彫刻 ヨーロッパでの歴史
古代ヨーロッパでは、硬い鉱石の特徴をいかして斧や刃などに使われていたことが、遺跡発掘で分かっています。あくまでも加工し道具として活用する硬い石でしたが、大航海時代の16世紀になるとアメリカ大陸や中国大陸から彫刻を施した翡翠が、宝飾品や芸術品として輸入されるようになります。やがてブローチやペンダントなどアクセサリーに欠かせない宝石となっていきます。
ヨーロッパでは硬質と軟質の品が混在する中、ひとつのルールをつくり出します。それまですべての翡翠は同種として扱われていたものを、軟石と硬石に区分したわけです。
今では「本物の翡翠」といわれる硬石(jade)に希少価値があるとしたのは、ポルトガル・スペインを経てフランスが決めたものだったのです。
翡翠彫刻 中華圏(アジア)での歴史
「中国4000年」と悠久の歴史をたたえる中国において翡翠が登場したのは、なんと創始以前の紀元前3000年、今から5000年以上前のころだといわれています。以来、中国でも国を治める権力者たちに大変珍重され、あの有名な西太后は翡翠彫刻の大ファンだったといわれていて、彼女が収集した芸術作品の一部は現在も故宮博物館に所蔵されています。
そして中国でも「死後、身体を保存する」神秘の石として権力者たちから重用され、同時にその権力を誇示するステータスシンボルとしても貴重な宝石となったのです。
現在は往時の翡翠が、容易に彫刻できる軟質翡翠(ネフライト)を多用しているとされ、芸術的な骨董の価値はあっても原石としての資産価値を低く評価される場合があります。
また中国周辺で有名なのがタイ国のエメラルド仏です。代表的な仏像彫刻で、観音菩薩の彫刻を施したものです。翡翠が持つ緑色の躯体から、「エメラルド」と名付けられている翡翠仏像が仏教徒のよりどころとなっていて、日々多くの人たちが拝観しています。
翡翠彫刻 日本の歴史
日本では縄文時代の遺跡から、数多く翡翠が出土しています。このことによって創始以前に埋葬時の副葬品として彫刻した翡翠を納めていたことが分かります。
翡翠はもともと日本国内で採掘されていましたが、弥生時代になると加工された翡翠が大陸から流入するようになり、奈良時代から昭和初期になるまで国内採掘をやめてしまいます。
結果的に国内鉱は採掘されなかったことから、今も豊富な埋蔵量を残したままとなっています。ただし現在は採掘禁止の天然記念物に指定されていますので、採掘による国内産が流通することはありません。
骨董として価値のある彫刻が施された翡翠の特徴
翡翠彫刻の骨董価値
骨董とは古くて希少価値のあることを差します。「古い」については意見が異なり一定の決まりはありませんが、一般的な骨董は100年以上経過したものとしています。
ただし翡翠は数万年・数十万年・数億年の歳月をかけて造り出された鉱物ですから、たとえ古い彫刻品であっても単純な経年数(古さ)だけで価値を図ることはできません。
価値ある翡翠の骨董
翡翠の骨董品としての価値を見極めるときは、第1に翡翠本来の美しさが重要となります。
第2は美術的な価値を図るデザイン性や彫刻技術のレベルで判断しますが、この価値観は国(地域)によって若干の違いがあります。
そもそも骨董は、希少で優れた品だとしても市場に需要がなければ(買い手がいない)、商品としての値は付きません。
ですから仏像のように置いているだけで価値があるもの、数珠や花台のように実用的なものは人気が高く、ひいては適正な評価を受ける「価値ある骨董」となり得ます。
「置いているだけで価値がある」骨董の代表格は仏像です。仏壇などに納める大きなものから、身につけて持ち歩けるお守りのような小さなものまでサイズは千差万別です。
彫刻され磨き上げられた仏像は「価値のある翡翠」へと変わり、希少価値のあるデザインや人気の高い仏様であれば「価値ある骨董」となるわけです。
翡翠を彫刻した骨董とは
骨董の翡翠のなかで、実用性の高い品は比較的適正に評価が受けられます。
また仏像や数珠のような宗教色の高い彫刻が施された骨董は、信心が安定した価値を保ってくれています。加えて芸術性が高ければ、コレクターからの評価でさらに価値が高まります。
また宝飾品や調度品は美術的な価値が相まって、相対的に高い評価が期待できます。
なかでも中国の骨董は、素材の特徴をいかした芸術性の高さが特徴で、コレクターの注目度も高い人気の品です。
注意したいのは、国内で人気の彫刻「菩薩像」と中国大陸で人気の「大黒天」の、骨董としての価値では同じであっても、需要の期待感を持つ中国骨董の価値が上回ることもあります。つまり骨董の価値は、市場からの需要によって左右されるものなのです。
価値ある翡翠鉱石とは
地球の表面を覆う地殻とその下にあるマントルの間で生成される翡翠は、他の宝石と同じようにたくさんの色を持ちます。そのなかでも最高峰に位置づけられるのは緑色の翡翠です。国内では深い緑色、国外では淡い緑色が高く評価されています。
また緑色と同様に高い評価を受けているのが白色、つまり純粋な翡翠色の透明色の結晶が集まって白色に見える、翡翠本来の色のものです。
ただし色ムラや内包傷があると極端に評価が下がりますので、信用できる鑑定書が付いたものが「価値ある翡翠鉱石」の条件となります。
日本国内外の有名な翡翠の彫刻と、希少価値の高い置物
代表的な翡翠彫刻といえば、アジアで広く信仰されている仏教をモチーフにした作品、また東南アジアで信仰対象である象や蛇などの生き物を丁寧に彫り込んだ作品、もしくは中華圏ではドラゴンなど架空の対象物も人気となっています。
国内外の有名な翡翠彫刻
国内で有名な翡翠といえば、三種の神器の勾玉です。
美術的な価値よりも歴代天皇に相伝された歴史的な価値が、「日本人の誰もが知る」翡翠といえます。
一方で海外では、翡翠に彫刻を施した芸術作品や有名な仏像があります。
台湾の故宮博物院にある「翠玉白菜」(すいぎょくはくさい)は、最も有名な翡翠彫刻といわれています。清国(現中国)時代の骨董で、白菜をモチーフに翡翠本来の白色と、神秘の力が期待される緑色が混じる原石をうまく調和させた最高傑作です。根元部分の白色と葉部分の緑色がみずみずしい白菜を表現しており、葉に付くイナゴやキリギリスがリアルに表現された、最高峰の芸術作品といわれています。
翡翠の仏像で有名なのは「エメラルド仏」です。タイ国のエメラルド寺院にある仏像です。
各地を流転し1784年最終的にエメラルド寺院に安置されたもので、縦66cm×横48.3cmの巨大な翡翠に彫刻した仏像です。
翡翠を彫刻した置物
鉱石自体が高価な翡翠の場合、大きなサイズの置物になるとそれだけでも資産価値が高くなり、まして美しい緑色であれば一段と評価は上がってきます。
その極上の翡翠を細部にこだわった芸術性高い彫刻が施されていれば、素材が持つ資産価値を上回る評価があるのは当然のこととなります。
サイズにもよりますが、一般的な翡翠の置物(原石)と彫刻を施した骨董とでは、同じ素材であっても単純に3倍以上の価格差が生じます。まして価値ある芸術品となると、価格差は10倍以上になることもあります。