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【更新:2024年10月】プラチナの価格予想、価値を上げる要因とは

【更新:2024年10月】プラチナの価格予想、価値を上げる要因とは

プラチナの価格は近年、上昇と下落を繰り返しています。理由はさまざまですが、2023年からについては引き続き、自動車産業との関係性を注視する必要があると考えられます。今回は、そんなプラチナの価値を主なテーマに解説を行います。

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プラチナの価値が高い理由は希少性

プラチナインゴット
結論から言うと、プラチナは他の貴金属と比べても高い価値を持ちます。一時は金以上の買取相場を記録していた時期もありました。この理由は、プラチナの希少性にあります。有史以来の総生産量は約7,200トンと推定されます。金と比較すると、これは約1/26という大変少ない量です。なお、年間供給量についても、プラチナは約200トン。金の年間供給量が3,000トンですから、約1/19です。地球上にあるプラチナの量にも限りがあり、しかもその量も決して多いとは言えません。

なお、宝飾品に使われる素材として有名なプラチナですが、実はその約60%以上は工業用途です。自動車やサイエンス、コンピュータ、バイオ分野で求められており、最先端技術等には欠かせない貴金属として知られています。

プラチナの価値を上げる要因とは

次に、プラチナの価格相場を高騰させる要因について、代表的なものを見てみましょう。

  1. 自動車産業
  2. 水素社会実現へのムード
  3. 消費国の経済状況
  4. 南アフリカ情勢

上記のなかで、近年とくに注目されているのが自動車産業と水素社会実現へのムードです。詳細は後述しますが、工業用途がメインのプラチナは、自動車産業の動向に大きく影響を受けます。また、水素からエネルギーを生成する際の触媒としてプラチナは活用が進んでおり、その需要が高まれば価値高騰も考えられるでしょう。

コロナの影響で値動きは不透明な状態

高い価値が期待される一方、近年のプラチナは新型コロナウイルスの流行によって不透明な値動きを続けています。プラチナ価格が高騰した2000年から、その後下落傾向を辿った2020年以降の流れを追っていきましょう。

2000年から2008年に起こったプラチナ先物価格の影響

相場グラフ
2000年頃に起こったプラチナの上昇トレンド。当初、1トロイオンスあたり約500ドルだったプラチナの先物価格は、2008年初旬から半ばのタイミングで、4倍近い2,000ドル近くまで急騰しました。主な要因は、自動車産業にあると考えられています。
しかし、なぜ自動車産業が盛り上がるとプラチナの価値が高まるのでしょうか?その理由について、以下から詳しく解説をしていきます。

プラチナのメイン消費は媒介

前提知識として知っておきたいのは、プラチナの用途です。一般的に宝飾品の素材として知られているプラチナですが、実は主な消費は工業用です。とくに、エンジンが化石燃料を燃やす際に発生する有害物質の浄化に活用されています。

プラチナは、性質を維持しながら他の物質の性質を変える「触媒」の特性を持つ素材です。排ガス浄化装置内部の蜂の巣状の構造に塗布されたプラチナが、装置を通過する排ガス中の有害物質を水と二酸化炭素に転換。

その後、マフラーから毒性が低下した排ガスが排出されるという仕組みです。このように、エンジンを使用する乗り物や機器などの需要が増えたり、装置に使われるプラチナ消費量が増えたりすると、供給とのバランスが変化し、相場に上昇圧力が生じるのです。2000年~2008年の墓場にかけては、排ガス浄化装置向けの消費が急増しました。その結果、プラチナ全体の需要が高まり、価格が上昇した経緯があります。

ディーゼル車ブームがプラチナ消費を後押し

それでは、なぜ排ガス浄化装置向けの消費が増えたのかを考えてみましょう。もっとも大きな要因として考えられるのは、欧州でのディーゼル車ブームです。2000年~2008年にかけて、欧州ではディーゼル車の新規登録台数が20~40%に増加。ガソリン車からディーゼル車へのシフトが進みました。

この動きの背景には、それまで環境規制に不向きとされていたディーゼル車が、技術の進展でクリーンなエンジンを載せることに成功したためです。また、ガソリン車に比べてパワーにも優れているという特長もあります。そんなディーゼル車の排ガス浄化装置で使われる媒介には、主にプラチナが使われています。これが原因で、プラチナの価値が一気に高まりました。

欧州の排ガス規制の強化

もう一点知っておきたいのは、欧州で行われた排ガス規制の影響です。
1990年代初めから段階的に進んだ欧州の排ガス規制強化。これは、プラチナの価格上昇と重なる時期です。排出ガスの基準値が厳しく制限されるなか、欧州の各自動車メーカーは規制への対応に追われていました。

規制の強化に伴い、ひとつの排ガス浄化装置に用いられるプラチナの量が増え、結果的に欧州全体の排ガス浄化装置向けのプラチナ消費、さらにはプラチナの全体的な消費が増加。これが、プラチナ価格の上昇を引き起こしたと考えられます。つまり、環境意識の高まりが、プラチナの急騰に寄与した形です。

しかし、排ガス規制への対応は決して容易なものではありません。技術革新とエンジンの改良には、研究開発費や人件費といったコストがかかります。各自動車メーカーには、大きな課題がのし掛かったとも言えるでしょう。その結果が、2015 年10月に起こったフォルクスワーゲン問題につながります。詳細は後述しますが、この問題の発覚によって、ディーゼル車の信頼が大きく損なわれ、その後のプラチナの価格下落にもつながります。

2020年の下落はランドと自動車生産量がポイント

まずは、南アフリカの通貨として使われているランドの影響です。新型コロナウイルスの流行によって、経済赤字国通貨は軒並み下落。それは南アフリカも同様で、ランドの対ドルレートも急落しました。プラチナの産出量7割を誇る南アフリカの通貨の価値が下がれば、現地からプラチナを輸入しやすくなります。その結果、プラチナの下落につながったのです。

そしてもうひとつの理由が、自動車向け需要の減少です。工業用プラチナの約6割は、自動車向けに利用されています。新型コロナウイルスの流行によって、自動車の生産量は大幅に落ち込みました。それに合わせて、プラチナ需要も減少したのです。このように、生産国の通貨価値の下落と需要の減少が組み合わさったことが、プラチナの下落圧力になったと言えます。

一方、南アフリカのプラチナ産出量は、2020年に大きく落ち込む結果ともなっています。この点については価値高騰の材料とも言えるでしょう。ただし、需要と供給の両方が小さくなるということは、そのままマーケットの縮小も意味します。実際に、2020年は産出量が減りながらも、供給過多の状況が続きました。

2021年以降の回復傾向

コロナショックにより大きな下落を強いられたプラチナ。しかし2020年下半期から世界経済の状況が改善に向かい、徐々にプラチナの需要も回復傾向になります。投資需要が伸びたことも、その一因と言えるでしょう。一方、南アフリカにおけるプラチナの産出量が復活したことで、供給量も増えています。

総じて、供給過多傾向ではあるもののマーケット全体に回復傾向が見られ、相場も長期的には上昇する見通しとされています。

ただし、次項で解説する自動車産業からの影響には注視が必要です。コロナショックが一時的なものだとするならば、自動車産業とプラチナの関係は、長期的目線で見ていくべきトピックスと言えます。

フォルクスワーゲン問題から続くプラチナへの影響

車の部品
プラチナの価値を考える上で、もっとも重要となるのが自動車産業です。そこで知っておきたいのが、2015年9月に起こったフォルクスワーゲン問題です。

事件の概要としては、ドイツの自動車大手・フォルクスワーゲンが、アメリカでディーゼル社を販売する際に行われるテストで不正を行っていたというもの。排ガス量を少なく見せることで、試験をパスしていたのです。

アメリカで大問題となったフォルクスワーゲンのディーゼル車。約40万台がリコールとなりましたが、全世界には約1100万台もの不正が疑われるディーゼル車がある、と認識されるようになりました。結果、ディーゼル車自体の信頼が大きく損なわれたのです。

ディーゼル車の浄化媒体として使われていたプラチナも、この事件の発覚によって大きな需要減に陥ります。リーマンショックの頃に大幅な値上げとなったプラチナですが、フォルクスワーゲン問題を境に、価値が伸び悩んでいるというのが現状なのです。

2023年以降のプラチナは価格が上昇する?

ポイント紹介する女性
新型コロナウイルスの流行やフォルクスワーゲン問題により、近年は不透明な動きを見せるプラチナ。しかし、最近ではガソリン車の浄化装置媒体がパラジウムからプラチナへ置き換わるなどの事態も発生し、需要が伸びてきています。

こうした工業用途に対する活用が進めば、今後価値上昇も期待できるでしょう。2023年も引き続き、その動向をチェックする必要があります。

一方、長期的な目線として、次世代車として注目される電気自動車やハイブリッドカーがより普及すれば、自動車産業に対するプラチナ需要が落ち込み、価格の下落を招く可能性も考えられます。このように、プラチナの価値はさまざまな要因に左右されるため、値動きに対する要因の分析が重要です。
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水野崇

水野様

キャリア20年超の株式トレーダー。講演・講師、取材協力、テレビ出演など多方面で活躍する独立系FP。LEC専任講師(法人事業本部)。学校法人専門学校東京ビジネス・アカデミー非常勤講師。テレビ朝日『グッド!モーニング』、BSテレ東『マネーのまなび』などに出演。日本FP協会「2021年FP広報センター」スタッフ。

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